研究課題/領域番号 |
20K11497
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
永木 耕介 法政大学, スポーツ健康学部, 教授 (10217979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 嘉納治五郎 / 柔道思想 / カウンターカルチャー / オリンピック |
研究実績の概要 |
2022(令和4)年3月27日に広島大学・教育学部で開催された日本スポーツ人類学会・第23回大会において「オリンピック柔道採用をめぐる嘉納治五郎の思想」と題する一般研究発表を行った。発表は、研究遂行の過程で入手した、嘉納の東京高等師範学校長時代の教え子・M氏による「嘉納師範の思い出」をテーマとした音声録音データおよび遺稿集を検討し、「嘉納治五郎はオリンピックに柔道を入れる意思はなかった」という筆者の仮説をさらに補強する内容であった。特に音声録音データでは、「柔道は絶対にスポーツじゃないんだから、オリンピックの種目には入れない」と嘉納は述べたと証言されている。この音声データは、1977(昭和52)年に、熊本県在住のN氏がM氏に対するインタビューを行って録音したものであり(M氏は1992年に逝去)、筆者は2021年12月、熊本県においてN氏に面会し、当時の周辺状況も含めて当音声データの信憑性を確認した。筆者はこれまでも国内外に残されたわずかな史資料に拠って仮説を立ててきたが、今回の研究によって仮説はほぼ正しいことが実証できた。また、当音声データによって東京高等師範学校の柔道部出身者においてもすでに大正時代に「柔道のスポーツ化」を容認・推進しようとする者の存在が明らかとなったが、嘉納は柔道について、日本文化を表象するものとして西洋スポーツに対するいわばカウンターカルチャーであることを求めていたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように研究成果を発表したが、その成果を得るためには音声データにおける当時のインタビュアー(聞き手)への面接調査を実施し、データの信憑性を確かめる必要があった。しかし、コロナ禍に加えて筆者(研究代表者)が東京在住のため、地方(熊本県)への調査を長期に及んで断念せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、3年間のうち、1年目で国内調査を終え、2年目で海外調査を行う予定であったが、コロナ禍により研究の進捗は遅れている。3年目にあたる2022年度の海外調査は未だ目途が立たない状況であり、インターネットを通じて海外の研究協力者と連絡を取りながら、国内に残存している海外情報・史料を掘り起こして一定の研究成果を出す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍により海外調査を実行できなかったことによる次年度使用額が生じたが、2022年度は海外の研究協力者と連絡を取りながら有効な調査方法を模索し、研究代表者の海外渡航あるいは海外研究協力者の招聘における旅費や、知識の提供に対する謝金等に使用する。
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