研究課題/領域番号 |
20K11500
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
村越 直子 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 准教授 (40465670)
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研究分担者 |
橋本 有子 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (50826972)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソマティクス / ダンス / 身体の教育 / 臨床教育学 / からだ / ソマティック・エデュケーション / ムーヴメント / エンボディメント |
研究実績の概要 |
令和2年度開始の本研究は、コロナウィルス感染症の世界的蔓延に影響され、研究計画を大幅に変更し、オンラインを用いての共同研究を実施した。当初予定していた海外調査・学会での調査が困難だったため、主要文献の講読を中心に進めた。ソマティクスの系譜を辿る上で重要と位置付けているマーサ・エディとの交流が、オンライン上で効果的、かつ継続的に行われた。以前より構想を立てていたエディの著書「Mindful Movement」の翻訳を、村越・橋本で進めている。その過程におけるエディとの質疑応答から、ソマティクス領域の創生の経緯に関して重要な知見を得ることができた。さらに、エディの主要論文1本の翻訳を完成させた。 また、オンライン開催の「Somatic Movement Summit」(2020年4月)と、「2020 BMCA Online Symposium」(2020年10月)に本研究者2名で参加し、報告された内容について本研究への関連性を確認した。これらの学会では主軸となっているソマティック実践者が講演を行っており、現時点での研究動向が伺われた。それは、コロナ禍における身体活動の変容に対して注意を促すものであり、ソマティック実践の必要性を説くものであった。その中でもドン・ハンロン・ジョンソン、マーサ・エディなど、当初より注目していた実践者らに加え、サンドラ・フラリー、エレノア・クリスウェル・ハナ、サラ・ホワットリーらの見解はソマティクスの系譜を将来につなぐ具体的な知見に満ちており、次年度からの研究調査に加えることを検討している。 エディのソマティクス実践については、日本臨床教育学会オンライン研究発表会にて村越が報告を行なった。研究分担者の橋本は、ラバン/バーテニエフ・ムーヴメント・スタディーズ/システム(LBMS)を用いた実践研究をすすめ、それらの論文執筆を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、海外調査に基づくソマティクスの基礎的・本質的概念の抽出である。そのための主要文献の収集と講読は順調に進んだ。コロナ禍で学会などが全てオンライン化されたことにより、想定した以上の資料が収集可能となった。今後それらを精査する時間が必要となるが、より多くの研究発表に触れることができたことは、研究動向を見極めるのに役立った。 研究の概要において記載したとおり、マーサ・エディとの交流が、オンライン上で効果的、かつ継続的に行われている。コロナ禍におけるエディの動向を追ったことにより、彼女の活動がソマティクス研究のグローバル・コミュニティをつないでいることが顕在化した。本研究者らはエディを介してそのコミュニティに参加する機会に恵まれた。そのことは本研究に新たな展望と明確な視野を与えるものであり、研究の前進と捉えている。エディ文献の主要論文1本の翻訳が完成した。そのほか2021年3月に、本研究者2名による共同執筆論文をソマティック関連のジャーナルに投稿(現在査読中)した。 また、研究分担者の橋本は、米国ラバン/バーテニエフ・ムーヴメント研究機関(LIMS)が基盤となり2020年に新たに発足した「多様性、公平性、包摂性検討協議会(Diversity Equity Inclusion (DEI) Committee)」のメンバーとして、オンライン会議に継続的に参加することとなった。橋本がそこに参加することにより、ラバン/バーテニエフの思想とその理論的解釈の更新を追うことが可能となった。今後その内容を本研究の成果に含み報告することができる。以上のことから、予定していた海外調査は実施できず、多くの変更と調整を余儀なくされたものの、研究の進捗については、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に関しては、未だ海外調査の実施可能性が低く、予定が立てにくい状況ではあるが、展望としては年度末(2022年3月に予定)には、第1回目の北米西海岸地区への調査を実施したいと考える。予定しているのは、ドン・ハンロン・ジョンソン、ビル・エヴァンズ、エレノア・クリスウェル・ハナへのインタビューと実践の参与観察である。調査実施前に、各人の文献の講読とそれについての研究討論を行う。とくに ソマティクスと研究領域を命名したトーマス・ハナと交流があったジョンソンの1980年代の文献は、その思想・原理の原点を映し出すものであると捉えおり、彼と交流があり造詣のある国内の研究者らを招いた研究会を実施する(2021年11月に予定)。 次年度以降も参加予定の国際学会(NDEO, IADMS, ISTETA)は、今年度はオンラインで予定されている。いずれにも参加予定であり、ソマティクスに関する世界の動向を追いたいと考えている。 本研究の基礎研究として、現在村越はエディの実践についての論文の投稿を予定している。橋本は実践研究として、LBMSに関する論文の投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が影響し、海外調査が不可能となり、調査出張費が使用できなかった。 次年度に関しては、未だ海外渡航が困難な状況であるが、予算額に準じて使用したい。未使用の出張予算は可能な年度に充当したい。
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