昨年度まで検討で腸粘膜透過性の亢進のタイムコースが判明した。そこで、安定的に結果が得られたSCIDマウスへのT細胞の移入による腸炎モデルにおいてマイクロアレイを用いた検討を行った。T細胞の移入後14日の時点では腸粘膜透過性の亢進は認められなかった。その後、移入後28日目の時点で再度透過性の評価(新規評価試薬である分子量1000の試薬Cで評価した)を行ったところ、顕著な透過性の亢進が認められた。この腸粘膜透過性の亢進はさらに2週間後のT細胞移入後42日目でも認められたが、その程度は移入28日後と同定度であった。このタイムコースデータより、移入21日目に再度腸粘膜透過性の評価を行い、腸粘膜透過性が最も亢進した個体と全くしなかった個体をそれぞれ2個体ずつ選別し、大腸サンプルをマイクロアレイによって解析した。その結果、炎症性サイトカインやケモカインについては両者で差のある因子はほとんどなく、少数の差がある因子についてもバリア破壊と関連付けられる因子は見つからなかった。一方で、透過性の亢進が認められた2個体で共通して増加していた因子として肥満細胞に発現するMcpt2(mast cell protease 2)が見出された。この時に肉眼的な変化や組織学的な変化はほとんどみられなかったことから、IBDが悪化する兆しを評価する指標として、透過性の増加やmcpt2の発現増加を用いることができる可能性が示唆された。
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