研究課題/領域番号 |
20K11510
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉山 政則 広島大学, 医系科学研究科(薬), 共同研究講座教授 (30106801)
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研究分担者 |
ナランダライ ダンシーツォーダロ 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特任助教 (00786072)
野田 正文 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特任准教授 (40457289)
杉本 幸子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (60549012)
東川 史子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特任准教授 (70346534)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物乳酸菌 / 生薬 / トリメチルアミン / アルコール中毒 |
研究実績の概要 |
昨年度までの成果として、特定の生薬の抽出液を培地として植物乳酸菌を培養すると、その培養液中に、腸内腐敗が進行すると特定の細菌群によって生成するトリメチルアミン (TMA) の産生量を抑制する作用があることを、in vitroの実験により突き止めた。本年度は、引き続きTMA産生を抑制する生薬エキスと植物乳酸菌の組み合わせを探索するとともに、スクリーニングで得られた生薬発酵液が、in vivoの系で効果を示すか否か、動物実験を行った。 まず、エタノールを経口投与して作出したアルコール中毒症状モデルマウスより得られる盲腸内容物を回収した。通常条件下で飼育されたマウスのものとは異なり、本内容物の一部を嫌気培養すると、TMA産生の著しい上昇が認められる。この系を用い、昨年度から継続して、試験サンプルとして生薬抽出エキス及びその発酵物を選んで実験した結果、ステビア抽出液を添加して盲腸内容物を培養した場合、TMAの産生量が最も効果的に抑制されることがわかった。又、発酵させる乳酸菌株としては、ライチ由来のLY45株が有望である可能性が示唆されたため、モデルマウスを用いた動物実験による検証には、本株による発酵液を用いた。 アルコール中毒症状モデルマウスに対し、ステビア抽出エキス (発酵 or 未発酵) を摂取させながら飼育し、盲腸内容物と血液を回収した。回収した盲腸内容物を嫌気培養したところ、ステビア発酵エキスを摂取させた群では、TMAの産生量が未摂取コントロール群と比べて有意に低下していた。また、血液検査の結果、アルコール中毒症状モデルマウスで上昇する肝機能数値ASTおよびALTの値が、ともに有意に低下していた。さらに、盲腸内容物の細菌叢解析を実施したところ、アルコール摂取によって上昇した、肥満や肝臓癌に関与するSMB53属の比率が、ステビア発酵エキスにより低下することも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エタノール摂取マウスより回収した盲腸内容物を使ったin vitroアッセイの結果、腸内腐敗の指標となるTMAの産生をもっとも抑制する生薬 (ステビア) エキスと植物乳酸菌 (LY45株) の組み合わせを決定することができた。また、その発酵液のTMA産生抑制効果について動物実験で改めて検証するとともに、盲腸細菌叢と肝機能数値に対する改善効果を新たに見出すことができた。ただし、炎症性腸疾患の予防改善に有効であると考えられるA. muciniphilaに関しては、その増殖を促進する生薬と乳酸菌株との組み合わせの実験における再現性を確認中であり、まだ確定に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、ステビアとLY45株との組み合わせにおいて産生される機能性分子が、アルコール中毒症状以外の炎症を伴う疾患モデルマウス、例えば高肥満、リウマチ、炎症性腸疾患、非アルコール性肝炎などを誘発させたマウスに対して有効性を示すか否か、検証する予定である。また、並行して、機能性分子の精製と構造解析についても実施する。
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