研究課題
GPR142はオーファン受容体であったが、最近、トリプトファンが最も強いリガンドとなることが明らかとなった。これまでに行ってきた我々の検討でヒトの高度肥満者で胃楔状切除術を受けた患者の胃では、GPR142 mRNA発現と炎症性サイトカインの発現が相関していた。実際に、炎症性サイトカインがGPR142の発現に直接影響を与える可能性について、グレリン分泌細胞株MGN3-1細胞を用いて検討を行った。MGN3-1細胞へ、TNFα、IL-1β、IL-6を添加したところ、GPR142発現は有意に上昇した。特に、TNFα添加時により反応が明確であり、阻害剤添加によりNFκB系路および、JNK系路が関与していることが判明した。炎症時には、トリプトファンの代謝経路であるキヌレニン系路が活性化され、キヌレニン系路の代謝産物が種々の免疫調節に働くことが知られている。GPR142は炎症状態で発現が上昇することから、GPR142がトリプトファンの吸収に影響を与え、間接的にトリプトファンの供給に影響を与えてキヌレニン系路を調節する可能性について検討を行った。GPR142ノックアウトマウスを繁殖させ、トリプトファン溶液を経口投与し、15分後に採血を行った。血中トリプトファン濃度は、野生型とノックアウトマウスで差は無かった。また、トリプトファンの吸収に関わるSlc6a19のmRNA発現は、上部および下部小腸で野生型とノックアウトマウスの間で差は無く、GPR142が急性のトリプトファン吸収には関与しないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画には、グレリン細胞を用いたサイトカインのGPR142発現調節への影響の検討は含んでいなかったが、炎症とGPR142の関連を明らかにするためには、ヒトの胃サンプルでの相関の検討だけでは不十分と考え、まずは、in vitroの系でサイトカインを細胞株に実際に添加することで、サイトカインが直接、GPR142調節に関わることを確認することとした。平行して、GPR142ノックアウトマウスの解析を行っているが、遺伝的背景を厳密にそろえるため、ヘテロマウス同士の交配で生まれたホモノックアウトおよび野生型を用いて検討している。そのため、それぞれ、雄の1/4ずつしか生まれないことから、繁殖に時間がかかり、多くの個体を得ることができないため、やや検討に時間を要している。
ノックアウトマウスの繁殖には時間がかかるため、代替可能な部分に関しては、細胞株や初代培養を用いたin vitroの系で検討を行うことで研究の推進を図る。
マウスの繁殖に時間を要するため、本年度に行えなかった解析用の試薬等を次年度に購入することとした。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Endocrine Journal
巻: 68 ページ: 231~241
10.1507/endocrj.EJ20-0371
巻: 67 ページ: 859~868
10.1507/endocrj.EJ19-0604
Cancer Science
巻: 111 ページ: 1468~1477
10.1111/cas.14363