GPR142はオーファン受容体として存在が知られていたが、トリプトファンがそのリガンドであることが判明し、これまでインスリンやグルカゴン、GLP-1、GIPなど膵、消化管ホルモン分泌調節にかかわることが報告されている。これまで、我々は高度肥満者の胃においてGPR142発現が炎症性サイトカイン発現と相関しており、グレリン分泌細胞株MGN3-1細胞へのサイトカイン添加で直接GPR142発現が誘導されることを見出し、GPR142シグナルが炎症調節に関与する可能性を考えた。 昨年度までの検討でGPR142ノックアウトマウスを用いた解析で、GPR142シグナルはトリプトファンの吸収に直接影響しないことが判明し、デキストラン硫酸ナトリウム腸炎(DSS)モデルでは、GPR142の欠損によって炎症性サイトカインの発現等に有意な変化は認められないことを確認した。今年度は、炎症モデルとして、エタノール投与胃炎モデルと全身性の炎症モデルとしてLPS投与モデルを用いて、GPR142欠損の影響を検討した。胃炎モデルでは、エタノール投与で胃のTNFαの有意な上昇は確認出来ず、野生型とノックアウトマウスの間でも有意な差は認めなかった。より全身的な炎症モデルとして、マウスへLPSの単回投与を行い、炎症性サイトカインの胃での発現を検討した。胃でのTNFα mRNA発現、IL-6 mRNA発現はGP142ノックアウトマウスにおいて、野生型と比較して有意な差を認めなかった。IDO1 mRNA発現は、GPR142 ノックアウトマウスにおいて高い傾向はあり、GPR142シグナルとキヌレニン系路の関連性を示唆する結果であった。 今後、さらにモデルを最適化して、改めて、GPR142の炎症への関与について研究を行っていく予定である。
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