研究課題/領域番号 |
20K11515
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
高橋 吉孝 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (10236333)
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研究分担者 |
川上 祐生 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (30453202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血小板型12-リポキシゲナーゼ / 肝星細胞 / NASH |
研究実績の概要 |
NASH進展における肝星細胞の活性化と筋線維芽細胞への分化の過程で、その発現レベルが上昇する血小板型12S-リポキシゲナーゼが、肝線維化の進行にどのように関わるかを見出すことを目的とした研究の第一段階として、まず、血小板型12S-リポキシゲナーゼを持たないヒト肝星細胞株TWNT-1に、血小板型12S-リポキシゲナーゼ発現ベクターを導入して安定形質発現株を樹立することを試みた。G-418で選択した結果、比活性の異なる12-リポキシゲナーゼ活性が検出できる細胞株が3つ得られた。これらの細胞の培養液中にアラキドン酸を添加すると、培養液中には生成物が還元された12-HETEが比活性に応じて検出された。抗血小板型12S-リポキシゲナーゼ抗体を用いたウエスタンブロットでは、いずれの細胞でもバンドが検出されたが、酵素活性の検出できないMock細胞ならびにオリジナルのTWNT-1細胞ではバンドは検出できなかった。そこで、これらの細胞にアラキドン酸を添加したものとしていないものからtotalRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行うことにより、遺伝子発現プロファイルの比較を行ったところ、血小板型12S-リポキシゲナーゼ発現細胞ではCOL1A1とCOL1A2の発現レベルが、Mock細胞と比較して低下していることが見出された。リアルタイムPCRにより、3つの酵素過剰発現細胞のいずれにおいても、この結果は確認された。そこで、最も比活性の高かった血小板型12S-リポキシゲナーゼ発現細胞を本酵素に対するsiRNAで処理したところ、コントロールsi処理をした細胞と比較して2つの遺伝子発現レベルはいずれも有意に上昇した。以上の結果から、肝星細胞株において血小板型12-リポキシゲナーゼはCOL1A1とCOL1A2の発現レベルを低下させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もう一つの実験計画である血小板型12-リポキシゲナーゼノックアウトマウスを用いた実験が、コロナ禍での動物の輸入の大幅な遅延によりほとんど進んでいないが、血小板型12-リポキシゲナーゼ過剰発現細胞を用いた実験は上記の通り当初の計画以上の進展をしているため。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肝星細胞株TWNT-1において血小板型12-リポキシゲナーゼがどのような機構でCOL1A1とCOL1A2遺伝子の発現レベルを低下させているかについて、マイクロアレイの結果を詳細に見直すことでその機構を解明し、ノックアウトマウスを用いた動物モデルに当てはめて行くことが今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノックアウトマウスの納入がコロナ禍で大幅に遅れたため、これを用いた実験を次年度に持ち越したため。次年度にこの予算はノックアウトマウスに関連した実験に使用する。
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