研究課題
昨年度までの研究において拾い上げた、線維化のレベルに応じてその発現レベルが、血小板型12S-リポキシゲナーゼの発現上昇に伴って変化することが、in vivoと in vitroの両方で示された複数の遺伝子について、本年度はそれぞれのsiRNAを作成してノックダウンを行い、コラーゲン遺伝子の発現レベルに影響するかどうかを調べた。その結果、これらの遺伝子のノックダウンを行った細胞のいずれにおいてもその発現レベルは低下傾向となり、そのうち1つは有意であった。そこで、これらの複数の遺伝子を同時にノックダウンしたところ、コラーゲン遺伝子の発現は有意に低下した。しかしながら、血小板型12S-リポキシゲナーゼ過剰発現によってみられるレベルまでの低下には至らなかったことから、これらの遺伝子は、このほかの遺伝子と協働してコラーゲン遺伝子の発現レベルを低下させることが強く示唆され、今後はすべての遺伝子の同定に向けて、DNAマイクロアレイにおいて16倍未満の発現レベルの変化がみられた遺伝子についても検討していく必要がある。研究期間全体を通して、血小板型12S-リポキシゲナーゼの肝星細胞における発現上昇が、NASH進展過程における肝線維化を抑制することが、血小板型12S-リポキシゲナーゼノックアウトマウスを用いて作成したNASHモデルマウスによるin vivoの実験、ならびに、血小板型12S-リポキシゲナーゼを過剰発現させたヒト肝星細胞株TWNT-1を用いたin vitroの実験から明らかとなり、そのメカニズムの一端を解明することもできた。今後は、メカニズムのさらなる解明に向けて、線維化抑制に関わる遺伝子ならびに血小板型12S-リポキシゲナーゼ生成物の同定を進めていく必要がある。
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