研究課題/領域番号 |
20K11517
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
久保田 晃生 東海大学, 体育学部, 教授 (40547973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 減災 / 防災 / 身体活動 / 体力 / 集団戦略 |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢者を対象に、ゲートウェイを減災体力の向上とした身体活動促進の集団戦略が有効であるかいなかを、介入研究により検証することであった。3年計画の3年目では、2年目から介入地区で実施している集団戦略を継続するとともに、集団戦略の効果を検証するための事後調査を2022年9月に、郵送法による質問紙調査で実施した。 集団戦略の内容としては、①減災体力向上に関する内容を組み込んだチラシの全戸配布、②減災体力向上教室の実施、③地域防災訓練での普及活動である。事後調査の調査対象者は、事前調査と同じ調査対象者である(追跡調査)。なお、事前調査の調査対象者は、要介護認定を受けていない65歳以上85歳未満の者であった。また、介入地区は該当する全数の603人とし、対照地区は介入地区と男性割合、前期高齢者割合を揃えた上で、住民基本台帳より無作為抽出し603人を選定した。 事前調査と事後調査の2回の調査に協力が得られた分析対象者は389人で、介入地区が183人(30.3%)、対照地区が206人(34.1%)であった。1週間の歩行による身体活動量は、介入地区が事前調査で338.1±368.9分/週、事後調査で333.2±395.9分/週、対照地区が事前調査で284.4±422.0分/週、事後調査で280.1±366.1分/週であり、交互作用は認められなかった。なお、防災・減災の意識においても有意な変化は認められなかった。ゲートウェイを減災体力の向上とした身体活動促進の集団戦略によって、身体活動量の増加や防災・減災に関する意識の変化は認められなかった。一方、減災体力をテーマとしたことで、行政の組織横断的な連携による協力体制や、メディアからの注目度も集めた。そのため、社会実装が高いテーマの可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況として、研究スケジュールからは約3か月程度、介入(集団戦略)の開始が遅れた。当初協力を予定していた自治体が、新型コロナウィルス感染症拡大により、協力が不可能になり、別の協力の得られた自治体において実施したことから、手続き等が遅れたためである。また、新型コロナウィルス感染症拡大による「まん延防止等重点措置」の影響もあり、予定していた教室開催が十分に実施できないといった、当初予期できないことも起こった。その結果、全体的に進行が遅れ、3年目に予定していた国内外への研究成果の発信が困難となり、4年目に実施する計画に変更することとした。以上から、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、新型コロナウィルス感染症拡大により、当初予定をしていた介入(集団戦略)が困難となった。また、本研究課題では、身体活動を主要なアウトカムとして位置付けたが、身体活動に大きく影響する外出自粛などの対策が、介入期間中にも取られた。このことも大きく影響し、当初想定されていた介入効果が認められなかった。このような状況ではあるが、今後の研究推進方策として、介入内容の見直しは必須である。 一方、ゲートウェイを減災体力の向上といった切り口で実施し、身体活動促進を目指した介入であったことから、健康づくりや介護予防の担当課のみではなく、防災や都市計画の担当課などが関心を持ち、行政の組織横断的な連携による協力体制の支援を得られた。これらは、研究の間接的な効果であるとも考えられる。 4年目には、研究成果を国内外に発信していく予定であるが、主要アウトカムの結果のみならず、減災体力の向上をゲートウェイにすることのメリットなどを整理して発信していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、当初3年計画で3年目に研究成果を国内外の学会で発信する予定であった。しかし、研究スケジュール全体の進捗が遅れたため、国内外の旅費を中心に、次年度使用額が生じた。使用計画としては、国内外の学会での発信をするため、旅費を中心に使用する予定である。
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