研究課題/領域番号 |
20K11518
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
田代 倫子 東京医科大学, 医学部, 准教授 (20398762)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マグネシウム / 活性酸素種 |
研究実績の概要 |
ラット心室筋の急性単離細胞で観られた活性酸素種による細胞内Mgイオンの低下が、細胞内でMgイオンと他の物質が結合したためなのか、細胞外へMgイオンが流出したためなのかを検討した。ラット心臓をランゲルドルフ装置に取り付けて、大動脈から逆行性に灌流し、灌流後に滴下してくる溶液を数分毎に採取した。採取した溶液を凍結、真空蒸発させ2.5倍の濃縮溶液とし、臨床化学分析装置を使った酵素法で溶液中のMgイオン濃度を測定した。灌流液に過酸化水素(0.5 mM)を混合し5分間灌流したところ、心灌流後の溶液中のMgイオン濃度は微量ではあるが有意に増加した。この結果により、過酸化水素がMg汲み出し輸送を促進させ、細胞内Mgイオン濃度を低下させる可能性が示唆された。 細胞内遊離Mgイオン濃度の低下速度と、過酸化水素濃度の関係を解析し、濃度依存曲線を得た。最大低下速度の50%を活性化する濃度(EC50)は約0.4 mMだった。算出された最大速度では5分間で細胞内Mgイオン濃度が0.27 mM低下することになり、つまり過酸化水素が定常状態のMgイオン濃度(0.9 mM)を約3分の2に低下させることになる。ラット心室筋細胞においてMgイオン濃度は細胞外溶液のMgイオンを除去してもほとんど低下しない。それにもかかわらず、活性酸素種によって約3分の1ものMgイオンが汲み出されるならば、活性酸素種が増加する病的な状態では生理的には働かない汲み出し輸送の活性化が起こる可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外へ漏出するマグネシウムイオンを検出するために、蛍光指示薬を使った細胞外マグネシウムイオン濃度測定に時間を費やしたが、微量すぎるためか成功しなかった。方法を変更して細胞外へのマグネシウムイオン漏出を確かめることができたので、おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
Mg汲み出し機構に着目して活性酸素によって活性化される系を探索する。過酸化水素以外の内在性活性酸素種の増加と細胞内Mgイオン濃度との関係についても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定していた国際学会への出張が制限され、今年度使用額が減った。来年度は研究の遂行に加えて、国際学会発表や論文執筆など研究成果発表のために助成金を使用する予定である。
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