研究実績の概要 |
脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)は高血圧自然発症ラット(SHR)から選択交配によって分離された系である。島根大学医学部の研究グループはSHRSPの第1、18染色体上に食塩感受性「量的形質遺伝子座」(QTL)があることを示唆し、SHRSP/IzmとSHR/Izmの間で交配を重ね、2つの脳卒中感受性QTLを両方同時に交換したダブルコンジェニック系統(SHRpch1_18およびSHRSPrch1_18)を作製した。当研究室ではこれまで、河内晩柑の果皮に含有される3,5,6,7,8,3’,4’-heptamethoxyflavone(HMF)とnaringin(NGI)の脳保護作用に着目し研究を進めてきたことから、本研究ではSHRSPとSHRpch1_18に高食塩負荷を行い、それぞれの成分の効果について解析した。 雄性10週齢の両ラットに対し対照群をCON群、1%食塩水を自由摂取させた群をNaCl群、1%食塩水とHMF 0.125%添加食を与えた群をHMF群、1%食塩水とNGI 0.25%添加食を与えた群をNGI群とした。12週齢で行動実験を行い、13週齢で脳を免疫組織化学染色法により解析した。 SHRSPの脳において、線条体や前頭皮質において強い脳卒中障害が認められることが報告されていることから、これらの領域に着目して解析を行った。SHRSPの実験における線条体と前頭皮質では、NaCl群でミクログリアの強い活性化が認められたが、NGI群では抑制されていた。さらに同領域における神経細胞は、NaCl群で減少していたがHMFとNGIのそれぞれの群では減少を抑制していた。SHRpch1_18の実験においては、線条体で見られるNaCl群のミクログリア活性化と神経細胞数の減少が、NGI群で改善されていた。
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