研究課題/領域番号 |
20K11525
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 老化 |
研究実績の概要 |
本研究では、臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の同定、機能解明、加齢性変化を検証し、ミトコンドリアの多様性の理解と臓器老化メカニズムの解明を目指す。本研究を遂行するにあたり、(1)臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の探索、(2)候補タンパク質を発現する細胞種の特定、(3)候補タンパク質のミトコンドリア局在性の検証、(4)臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の機能解析、(5)老化モデルにおける臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の発現・機能解析の5つの項目を計画した。 当該年度は、老化に関連する臓器特異的なミトコンドリアタンパク質を同定する新たなアプローチとして、細胞老化モデルのプロテオーム解析を実施した。複製老化前後の細胞から単離したミトコンドリアのプロテオーム解析を実施し、2倍以上増減したタンパク質を選抜した。その結果、49種類のタンパク質が増加し、42種類のタンパク質が減少していた。公共データベースThe Human Protein Atlasを参照し、 これらタンパク質の臓器特異性を確認した。「Tissue enriched 」、「Tissue enhanced」、「Low tissue specificity」とアノテーションされた増加タンパク質は、それぞれ1種類、18種類、30種類であった。減少タンパク質は、「Tissue enhanced」、「Low tissue specificity」がそれぞれ8種類と33種類であった。「Tissue enriched 」または「Tissue enhanced」に分類された増加タンパク質の内、それぞれ肝臓、骨髄、脂肪、腎臓、精巣、膵臓、骨格筋、食道に豊富に存在するタンパク質として8種類を選抜した。今後、これら候補タンパク質の解析を進め、老化に関連した臓器特異的ミトコンドリアタンパク質としての同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の探索、(2)候補タンパク質を発現する細胞種の特定、(3)候補タンパク質のミトコンドリア局在性の検証、(4)臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の機能解析、(5)老化モデルにおける臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の発現・機能解析の5つの項目を設定し、研究を進めている。 当該年度は、老化との関連性が見込まれるミトコンドリアタンパク質を同定するために、細胞老化モデルを用いたアプローチを行った。その結果として、細胞老化に伴って発現変化を示すミトコンドリアタンパク質を同定することができた。これらの中には臓器特異性を示すタンパク質も含まれており、老化に関連した臓器特異的タンパク質である可能性がある。このように、候補タンパク質を同定することができ、概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
方策1:細胞老化モデルのミトコンドリアプロテオーム解析から選抜された臓器特異的ミトコンドリアタンパク質候補の解析を進める。具体的に、候補タンパク質の免疫染色や高純度ミトコンドリアのタンパク質発現解析などにより、ミトコンドリア局在性を確認する。次に、マウスの各種臓器における各候補タンパク質の発現・局在を遺伝子発現、タンパク質発現、免疫組織染色、in situ hybridization等により確認する。さらに、老齢マウスにおける候補タンパク質の発現変化ならびに老化マーカー、炎症マーカー等との相関関係等を解析し、老化メカニズムとの関連性を検証する。 方策2:方策1によりミトコンドリア局在性と臓器特異性が確認されたタンパク質の機能解析を実施する。具体的に、遺伝子導入やRNAi技術、阻害剤などを用いて標的タンパク質の発現・機能を制御し、ミトコンドリアの形態・機能的変化を検出する。また、細胞の生存・機能に対する標的タンパク質制御の影響を評価する。これらにより、臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の機能解明を目指す。 課題・対応策:細胞老化モデルから老化に関連した臓器特異的ミトコンドリアタンパク質の同定を進めているが、選抜している候補タンパク質が十分なミトコンドリア局在性ならびに臓器特異性を示さない可能性が考えられる。その場合は、若齢および老齢マウスの各種臓器から単離したミトコンドリアのプロテオーム解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、国際学会に参加できず、宿泊・交通費が未使用となったため、次年度使用額が生じた。次年度は、実験に使用する物品を購入する費用として使用する予定である。
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