研究課題/領域番号 |
20K11526
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
土持 裕胤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60379948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / エピゲノム修飾 / 低出生体重 |
研究実績の概要 |
本研究は運動習慣や食習慣といった環境要因によるエピゲノム修飾とメタボリックシンドローム発症リスクに焦点を当て、母体内環境(低または過剰栄養)に起因する胎児期・新生児期のエピゲノム修飾がその後の加齢過程におけるメタボリックシンドローム発症リスクに及ぼす影響を明らかにするものである。さらに、運動や食習慣の改善が生活習慣病発症リスクを下げうるかどうかについて、個体レベルから臓器、細胞、プロテオーム、エピゲノム、の各レベルに渡って解明を目指す。 初年度は、妊娠後期の食餌制限(-30~50%)による低栄養(Food Restriction:FR)、または低酸素(10-12% O2)暴露(Maternal hypoxia: Hx)により低出生体重仔を出産させ、その後の発達を数か月観察した。どちらの群も、生後3.5週で離乳させ、生後8週齢までは標準餌(CE-2、日本クレア)を自由摂取させた。8週齢以降は高脂肪(粗脂肪約15.3%)・高カロリー(約425kcal/100g)のクイックファット(日本クレア)および10%果糖・ブドウ糖溶液を自由摂取とし、正常妊娠・標準餌・水(コントロール)群と比較した。 FR群は、予定通りE19.5で出生したが、試みた例の大半において、新生仔は生後1-2日で死亡した。死亡した個体の体重は正常出生群よりも小さかった。Hx群は10%O2だと妊娠期間が延長し、大半が死亡した。12%O2においても大半は出生後数日以内に死亡した。わずかに生存した個体は体重の増加がコントロール群よりも大きかった。どちらの群も、母親マウスにストレスがかかっていて十分な母乳が出ない等の可能性を考え、代理母を用いたが、生存率は上がらなかった。現在、餌の投与量や低酸素の程度を変更し、ようやく安定してモデル動物を作出できるようになり、最終評価の週齢に達するまで長期飼養中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小動物を用いた低出生体重児モデルの先行研究を参考にし、FR群は給餌量30-50%制限、Hx群は10-12%O2暴露を設定した。ところが、どちらの群も出生はするが、その後、数日以内に死亡した。毎朝ケージを確認し、仔の死因が母による食殺ではないことは確認している。 低栄養、低酸素、どちらも雌マウスにとっても高ストレスであり、充分な母乳が出ない等の原因がある可能性を考え、代理母マウスによる哺育を試みたが、効果は無かった。明らかに仔の運動性が低く、仔に生きる力が無いと思われた。したがって、餌の量、酸素濃度、期間を調整し、出生時体重が正常群よりも有意に小さく、かつ順調に発育する条件を見つけるために、検証に時間を費やしてた。ようやく条件の最適化が終わり、これからモデル動物を増やすことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はマウスの低出生体重仔モデルを作成したが、今年度はラットとマウスを両方用いる。マウスと同様、ラットで低出生体重仔を出生させ、高脂肪餌・高糖水の長期投与によるメタボリックシンドローム発症の程度を調べる。 安静群で定期的にin vivoでの心臓血管機能評価(心臓超音波検査や心室圧―容積解析)や経口糖負荷試験による耐糖能評価を行い、耐糖能異常や心室拡張機能低下が認められた時点で血液および臓器を摘出し、遺伝子・タンパク質発現解析を行う。DNAメチル化解析、ヒストンアセチル化解析に着手しする。最初はDNA全体的な解析を行い、その後特定の遺伝子に対して詳細な解析を行う。 昨年度の計画からの遅れを解消するため、運動介入群の実験を前倒しで開始する。運動介入は、高強度インターバルトレーニングまたは低強度持久走とする。安静群と同じタイミングで定期的にin vivoでの心臓血管機能評価や耐糖能評価を行い、血液および臓器を摘出し、遺伝子・タンパク質発現解析を行う。 オスとメスの実験を同時に行うのは仕事量的に難しいため、今年度はまずオスのみを用い、良い結果が得られた場合に同条件での実験をメスでも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの支出額であったが、残5円を使い切る方法が無く、余ってしまった。 生じた次年度使用額は今年度の助成金と合わせて使用する。
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