研究課題
グリオーマは最も頻度の高い脳腫瘍の一つである。中でもグリオブラストーマは浸潤が非常に早く、加えて放射線・化学療法に抵抗性であるため、早期発見・治療となる指針を確立することは急務である。近年、WHOによるグリオーマの分類に遺伝子学的診断が加わり、特に細胞内代謝に関与する重要な酵素であるイソクエン酸脱水素酵素 (IDH) 遺伝子変異の有無により予後が大きく変わることから、細胞内代謝系と脳腫瘍の生物学的特性との関連が注目されているが、その詳細は明らかになっていない。本研究はオレイン酸に強い親和性を持ち、グリオブラストーマに高い発現を示す脂肪酸結合蛋白質 (FABP7) に着目し、“脳腫瘍増殖の病態メカニズムにおけるオレイン酸代謝の意義”を明確にすることを目指すものである。FABP7は脂肪酸等のリガンドと結合することで、蛋白質の立体構造が変化し、核内移行シグナルが新たに形成され、核に移行するという特性を持つ。これまでにFABP7の局在を変化させるモデル細胞を用いた解析で、FABP7の核局在は核内アセチルCoAを増加させると共にヒストンアセチル化レベルを増加させることを見出した (Kagawa et al. Mol Neurobiol. 2020)。さらに悪性度が高く予後不良の野生型IDH1グリオブラストーマではFABP7の発現が高く、核に強く発現することを見出し、そのFABP7 の核局在とグリオブラストーマの増殖能は強く相間することを明らかにした(Kagawa et al. Mol oncology. 2022)。また脂肪酸の中でもオレイン酸がFABP7の核移行を誘導し、核内脂肪滴形成に寄与すること、また転写制御に関わる核内構造体PML小体と核内脂肪滴の共局在に寄与することを明らかにした (Umaru et al. FEBS J. 2023)。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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