研究課題
フラボノイドは天然の植物に含まれる有機化合物である。ケルセチンは果物や野菜に多く含まれるフラボノイドの一種である。我々はケルセチンが肥満細胞、上皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞においてNrf2-heme oxygenase (HO)-1経路を介して細胞保護効果を示すことを報告した。本研究ではフラボノイドは実際のストレスを与えずに細胞に防備態勢を誘導することが多彩な細胞保護効果発揮の出発点であると考え、作用点と考える細胞膜で誘導されるストレスセンシング機構を探索・同定することを目的とし、なかでも選択的オートファジーに着目して、ケルセチンによって誘導されるNrf2-HO-1経路の関与について検討した。ケルセチンは、LC3-IからLC3-IIへの転換とp62の発現とリン酸化を誘導したことから、ケルセチンが選択的オートファジーを誘導し、またケルセチンが誘導したp62がKeap1-Nrf2経路において正のフィードバックループを構築する可能性が示唆された。CRISPR/Cas 9システムを用いて、HO-1 knock-out (KO) RAW264.7細胞を樹立した。HO-1の欠損はLPS/IFN-γによるIl6の発現抑制を弱めたが、ケルセチンによる抑制効果を完全には回復させることができなかった。これらの結果は、ケルセチンによる細胞保護効果にはNrf2-HO-1経路以外の機構が関与している可能性を示唆した。次に選択的オートファジーにおけるHO-1の関与について検討した。HO-1の欠損は、ケルセチンによって誘導されるp62の発現を増強した。これらの結果は、HO-1がp62の発現を負に制御している可能性を示唆するものであった。以上の結果から、ケルセチンによって誘導される選択的オートファジーは細胞の状態に応じたHO-1による制御を受けながら細胞保護効果を発揮する可能性が示唆された。
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