研究課題
令和3年度の研究実績としての論文発表は、現在の研究テーマである“慢性腎臓病症例における脳内酸素動態および認知機能と栄養学的指標の関連”の一部分を担う高度慢性腎臓病症例、特に腹膜透析症例の脳内酸素動態に関する報告を行っております。腹膜透析患者の脳内局所酸素飽和度は腹膜透析期間とともに血清アルブミン濃度とそれぞれ独立した有意な関連を認めることが明らかとなり、腹膜透析患者では栄養管理を含めた血清アルブミン濃度の維持・上昇が脳内酸素動態の維持・改善に重要であると考えられました(Kitano T, Ito K, Ookawara S, et al. Int J Artif Organs. 2021年)。近年、血液透析症例における体液管理において腹腔内循環動態の関与が注目されています。私たちは、血液透析患者において、腹腔内循環動態を示す肝臓内局所酸素飽和度と臨床的因子との関連について検討し、血液透析前の肝臓内局所酸素飽和度はヘモグロビン濃度、平均血圧、心血管疾患の既往、血清アルブミン濃度、膠質浸透圧とともにBMIと有意な関連を示すことを明らかとしました(Ueda Y, Ookawara S, et al. PLoS One. 2021年)。さらに、血液透析中の食事摂取は循環動態の悪化に関連することが以前より知られていますが、食事による循環動態悪化に先立ち、肝臓内局所酸素飽和度の低下を認めることも報告しました(Imai S, Ookawara S, et al. Nefrologia. In press)。学会発表においては、日本透析医学会学術総会ではシンポジストとして慢性腎臓病症例、特に透析症例の脳の酸素化について報告を行いました(伊藤聖学、大河原晋、他 2021年)。日本腎臓学会では血液透析症例の脳内酸素動態から見た目標ヘモグロビン値について報告しました(大河原晋、他 2021年)。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度から開始しました本研究は現在まで、順調に症例登録も進み、研究開始時の症例登録もほぼ終了しています。また、登録後1年後となった症例に対する脳内局所酸素飽和度測定、認知機能評価であるMini-Mental State Examinationの再検査、栄養学的指標である食塩摂取量、タンパク質摂取量、エネルギー摂取量の把握、などの諸検査の再検査を順次、行っている状況です。
今後、登録した症例を対象として、登録後1年後の脳内局所酸素飽和度測定、認知機能評価であるMini-Mental State Examinationの再検査、栄養学的指標である食塩摂取量、タンパク質摂取量、エネルギー摂取量の把握を行い、登録時および1年後の脳内局所酸素飽和度とMini-Mental State Examinationスコアおよび各栄養学的指標との関連について、解析を加える予定であります。
令和3年度はCOVID19蔓延期であったために、各種学会等への参加が制限され、参加できない学会の参加費等、次年度への繰り越しとなっております。これらの費用は本研究に関わる消耗品等の購入に充てる予定です。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
PoS One
巻: 16 ページ: e0259064
10.1371/journal.pone.0259064
Int J Artif Organs
巻: 44 ページ: 822-828
10.1177/03913988211020017