研究実績の概要 |
令和4年度の研究実績としての論文発表は “慢性腎臓病症例における脳内酸素動態および認知機能と栄養学的指標の関連”に関する報告を行った。具体的には、透析療法を行っていない保存期慢性腎臓病症例を対象に一年間にわたる認知機能の推移と認知機能変化に関連する臨床的因子を解析し、認知機能評価に使用したMini-Mental State Examinationスコアは一年後に有意に上昇し、その変化にはBMI変化量および脳内局所酸素飽和度変化量がそれぞれ有意な正の関連を示すことが明らかとなった(Ookawara S, Ito K, Sasabuchi Y, et al. Sci Rep. 2022年)。この結果より、慢性腎臓病症例の腎性貧血・体液管理を含めた集学的治療による脳内酸素動態の維持とともに栄養学的介入による体格の維持が認知機能の維持・改善につながることが明らかとなった。また、血液透析施行中の慢性腎臓病症例において、血液透析終了後の臥位から立位への体位変換により糖尿病合併症例では著明な血圧低下とともに脳内酸素動態の悪化を来すこと(Imai S, Ookawara S, Ito K, et al. J Artif Organs. 2022年)に加えて、内シャント側手指酸素動態の維持にヘモグロビン濃度および血清クレアチニン濃度に反映される筋肉量維持が重要な役割を果たすことも明らかにした(Sugiyama T, Ito K, Ookawara S, et al. Sci Rep. 2022年)。学会発表においては、日本透析医学会学術総会教育講演、日本透析医会秋期セミナー、日本腎臓リハビリテーション学会シンポジウム、IHDF研究会シンポジウムにおいて、血液透析患者の体液管理・栄養管理と体内酸素動態および認知機能の関連について、これまで得られた知見についての報告をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度から開始しました本研究は現在まで症例登録も進み、研究開始時の症例登録はほぼ終了しています。また、登録後1年後となった症例に対する脳内局所酸素飽和度測定、認知機能評価であるMini-Mental State Examinationの再検査、栄養学的指標である食塩摂取量、タンパク質摂取量、エネルギー摂取量の把握、などの諸検査の再検査を順次、行っている状況であり、現在まで解析可能な症例を対象とした中間解析の結果を論文化し、報告しています(Ookawara S, Ito K, Sasabuchi Y, et al. Sci Rep. 2022年)。全体的にはCOVID19蔓延期の影響下で、一部の症例で登録1年後のフォローアップに遅れが生じています。
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