研究実績の概要 |
令和5年度の研究実績として、慢性腎臓病症例の最重症群である血液透析症例では血液透析中の肝臓内局所酸素飽和度の変化は除水速度および収縮期血圧変化に関連すること(Ookawara S, et al. Int J Artif Organs. 2023)を明らかにし、さらにその時の脳内酸素飽和度変化は肝臓に比し、有意に小さいことを英語論文で報告した(Kaneko S, Ookawara S, et al. J Clin Med. 2023)。さらに、血液透析患者の体液管理と体内酸素動態の関連について日本透析医会雑誌に報告を行った。学会発表ではIHDF研究会シンポジウムにおいて、血液浄化療法による脳内および肝臓内酸素動態に相違があることを報告した。本研究のテーマである“慢性腎臓病症例における脳内酸素動態および認知機能と栄養学的指標の関連”の研究期間のまとめとして、透析療法を行っていない保存期慢性腎臓病症例では認知機能の評価尺度のMini-Mental State Examinationスコアの変化はBMI変化および脳内局所酸素飽和度変化と有意な正の関連を示すことが明らかとなり、脳内酸素動態の維持とともに栄養学的介入による体格の維持が認知機能の維持・改善につながることが明らかとなった。さらに血液透析症例では治療中の血圧低下が脳内および肝臓内酸素動態を悪化につながることが示されたが、栄養補給を目的とした血液透析中の食事摂取が直接的に肝臓内酸素動態の悪化につながることも報告し、慢性腎臓病症例、特に血液透析症例における栄養補給のタイミングにも注意を払う必要性が示唆された。さらに腹膜透析症例の脳内局所酸素飽和度は血清アルブミン濃度と有意な正の関連を示すことより、栄養学的介入による血清アルブミン濃度の維持・上昇は脳内酸素動態の改善を介して認知機能の維持・改善にもつながる可能性も示唆された。
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