研究課題
糖尿病では自然免疫や獲得免疫に変化が起こり易感染性となり重症化しやすいことが知られている。易感染性の原因としては、好中球や単球・マクロファージなどの食細胞の機能低下、細胞性免疫反応の低下が多く報告されているが、免疫機能の低下におけるミトコンドリアの役割は未だ不明な部分が多い。ミトコンドリアは酸素を利用してエネルギーを作り出す細胞内小器官であり、酸素を利用する際の副産物として活性酸素(ROS)を生じる。過剰なROSの産生は、老化や糖尿病、動脈硬化などの疾患の原因となっている。しかしながら、免疫細胞においては、ROSは免疫応答時のシグナル伝達物質(ROSシグナル)として重要な役割を果たすことが最近注目されている。さらに、ミトコンドリアは代謝の中心的な役割を果たしており、糖尿病における代謝異常にも深く関与していることが知られている。本研究課題では、糖尿病モデルマウスを用いて、各種免疫担当細胞における免疫応答時のミトコンドリア機能を測定し、糖尿病に伴う免疫機能の低下の分子メカニズムを明らかにすることを目標としている。当研究室にて開発した酸化ストレスモニタリング糖尿病マウスを用いて、全身の様々な臓器の酸化還元状態を解析したところ、脾臓やリンパ節が糖尿病モデルマウスにおいて最も変化していることが明らかとなった。そこで、免疫細胞にターゲットを絞り、免疫細胞の表面マーカーを染め分けることにより、各種免疫担当細胞における酸化還元状態を測定し、糖尿病モデルマウスにおいてはT細胞の酸化還元状態が最も大きく変化していることが明らかとなった。本研究では、T細胞のサブセット解析とミトコンドリア活性解析を組み合わせて糖尿病マウスの解析を実施した。そして、糖尿病モデルマウスでは、ミトコンドリアの活性が免疫細胞の中でもT細胞の活性化に重要であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病モデルマウスにおいては、各種免疫担当細胞の中でもT細胞のミトコンドリア活性が低下していることを明らかとし、主要なデータは取得している。
本研究で得たデータをまとめて論文とし学術誌に投稿する。論文の構成を検討していく上で論文の結論を補強するようなデータを検討し、必要に応じて追加実験を行う。
前年度の予算を使い切らないうちに主要なデータが揃ったため次年度に繰り越すこととなった。次年度へ繰り越した研究費は、研究結果を論文としてまとめていく上で必要な追加実験に使用する。具体的には、実験動物、細胞培養試薬、PCR関連試薬、フローサイトメーター用試薬、免疫組織炎症関連試薬、ミトコンドリア解析用試薬等の試薬類、および、顕微鏡や画像解析、各実験に使用する消耗品に使用する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1867 ページ: 130302~130302
10.1016/j.bbagen.2022.130302