研究課題/領域番号 |
20K11543
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
辻 雅弘 京都女子大学, 家政学部, 教授 (80579467)
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研究分担者 |
藤井 律子 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 准教授 (80351740)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発達障害 / ADHD / 低出生体重 / 腸内細菌叢 / プロバオティクス |
研究実績の概要 |
我々は独自に穏やかな子宮内低灌流負荷による低出生体重モデルラットを開発した。同モデルは多動などの行動障害を引き起こすが、脳組織障害は軽微である。すなわち、低出生体重でその後に多動(注意欠如多動性障害:ADHD)を呈する児を再現する今まで存在しなかったモデルである。本研究の目的は、同モデルを用いて子宮内低灌流がADHDを引き起こす機序を生化学・組織学・行動学的に検証することである。 低出生体重ラット仔に母乳中成分(ラクトフェリン)を経口投与し、その効果を検証していたが、ラクトフェリンの提供を得ていた食品企業が、動物愛護団体の批判を受けて動物実験から完全に手を引くことになり、同剤の提供が得られなくなった。研究計画を大幅に見直さざるを得なくなった。その時点までに得られた行動試験結果をまとめ、脳サンプルを用いて組織評価などを行ったが、個体数が少ないため結論を出し難い。 母乳中成分を用いた研究が計画とおりに遂行できない状況となったため、プロバイオティクスを用いた研究を行った。低出生体重ラット仔に日齢1から20まで毎日ビフィズス菌をゾンデを用いて経口投与した。順次各種行動試験を行い、青年期相当期に灌流固定を行い、脳を取り出し、Nissl染色や免疫染色によって脳の組織変化を検討した。ビフィズス菌投与によって低出生体重ラットの行動量が減少したが、脳組織障害の改善は認めなかった。脳内のミクログリア(Iba1陽性細胞)は低出生体重ラットにおいても増加しておらず、ビフィズス菌投与による変化も認めなかった。16S rRNA解析で調べたところ、低出生体重ラットの腸内細菌叢は標準出生体重ラットの腸内細菌叢と違いが見られ、ビフィズス菌投与によってその違いは打ち消されていた。以上のことを論文として発表した(Itoh et al., Pediatr Int 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低出生体重ラット仔に母乳中成分(ラクトフェリン)を経口投与し、その効果を検証していたが、ラクトフェリンの提供を得ていた食品企業が、動物愛護団体の批判を受けて動物実験から完全に手を引くことになり、同剤の提供が得られなくなった。研究計画を大幅に見直さざるを得なくなった。その時点までに得られていた脳サンプルを用いて組織評価などを行ったが、個体数が少ないため結論を出し難く、プロバイオティクス投与研究に重点を移して研究を行ったこともあり、母乳中成分投与研究の進捗は遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
母乳中成分(ラクトフェリン)研究に関して得られた個体数は少ないが、少ないなりにも論文としてまとめる計画である。得られた脳サンプルを用いて追加の組織評価などを行い、行動試験結果などと合わせて解析し、論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
母乳中成分(ラクトフェリン)の提供を得ていた食品企業が、動物愛護団体の批判を受けて動物実験から完全に手を引くことになり、同剤の提供が得られなくなった。そのため研究計画を大幅に見直さざるを得なくなり、進捗が遅れているため。 得られている脳サンプルを用いて追加の組織評価などを行い、行動試験結果などと合わせて解析し、論文化する予定である。そのための費用に充てる。
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