研究課題/領域番号 |
20K11549
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
松木 恒太 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (40586997)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コレステロール搬出能 / ポリフェノール / インスリン分泌 |
研究実績の概要 |
前年度、マウス膵β細胞由来のMIN6細胞を用いて、インスリン分泌とコレステロール搬出を促進するポリフェノールの探索を行い、イソラムネチンがインスリン分泌促進作用およびコレステロール搬出を増強させる作用があることを見出した。 イソラムネチンのインスリン分泌とコレステロール搬出を増強させるメカニズムとして、細胞膜に存在しコレステロール輸送体として働くAbca1およびAbcg1の発現の増強によるものを考え、RT-PCRにより確認したところ、予想に反してケルセチン・イソラムネチンともにAbca1およびAbcg1のmRNA発現を低下させるという結果が得られた。また、Western blotting でも同様に、ケルセチンおよびイソラムネチンがAbca1およびAbcg1のタンパク発現量を低下させる可能性を示唆する結果が得られた。 レスベラトロール、ベルベリン、クルクミン、ヘスペレチンなど他のポリフェノールについてもスクリーニングを行ったが、イソラムネチンを上回る候補となる物質は見いだせなかった。 一方で、耐糖能を悪化させる懸念のあるスタチンのなかで、シンバスタチンがコレステロール搬出能とインスリン分泌を低下させることが確認された。本研究の最終目的と直接関連するものではないが、コレステロール搬出とインスリン分泌の関連メカニズムの解明に向けて有用な結果が得られたと考えている。 現在のところ、Abca1およびAbcg1の発現を増強することでインスリン分泌およびコレステロール搬出を促進するポリフェノールはまだ確認できていないが、イソラムネチンのインスリン分泌促進作用とコレステロール搬出の増強作用は他のポリフェノールに比較して強いものであり、膵β細胞の保護作用が期待されるポリフェノールとして有力な候補物質の一つであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イソラムネチンより有力な候補物質を見出すことが出来なかったため、糖尿病モデルマウスを用いた実験に進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
まだ検索できていないポリフェノールは多数あり、イソラムネチンより有力な候補物質がないか引き続き探索する。 並行して、イソラムネチンのインスリン分泌およびコレステロール搬出の増強作用のメカニズムを検討する。スタチンのインスリン分泌およびコレステロール搬出抑制作用についてもabca1の発現などを確認し、そのメカニズムを検討する。 その結果をもとに糖尿病モデルマウスを用いた実験を進めることを今年度の目標とする。
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