研究課題/領域番号 |
20K11553
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 孝 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (20597124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 乳酸菌 / 乳酸 / エネルギー代謝 / 解糖系 / 呼吸 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア異常があり、ヒトミトコンドリア病リー脳症のモデルであるNdufs4 KOマウスにおいて特定種属の乳酸菌株5株で寿命延長するとともに、広い濃度域(0.05%から1%までの4濃度全て)の乳酸でも健康寿命を有意に改善できた。すなわち経口投与による乳酸の摂取がミトコンドリア異常をマウスで改善できる可能性を示した。本マウスでは腸内細菌叢における乳酸菌種属の割合が減少する。乳酸菌補充により病態が回復することからも、腸内細菌叢における乳酸菌減少が病態進行の要因であることも示唆される。 乳酸がミトコンドリア機能改善する際のメカニズム解析として、培養細胞を用いて代謝フラックスアナライザー解析を行った。その結果、乳酸により濃度依存的に解糖系が阻害されるとともにミトコンドリア呼吸を活性化できることを示した。3種類の培養細胞を用いて全ての細胞(Hela細胞、Cybrid 0%, Cybrid 97%)で効果が得られた。そのうちの一つはミトコンドリアDNA変異を有しミトコンドリア機能に異常を持つ細胞においても見られた。すなわち乳酸は機能異常を持つミトコンドリアも含めてミトコンドリア機能改善できる可能性を示した。 以上、ミトコンドリア機能を乳酸菌が改善するメカニズムの一端を乳酸が担うことを、マウスモデルで示すとともに、培養細胞を用いて、その機構として解糖系とミトコンドリア呼吸のエネルギー代謝のバランスをミトコンドリア側にシフトすることが寄与している可能性を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの病態改善効果を示すとともに、細胞モデルを用いてその機能改善のメカニズムも提示した。すなわち具体的なメカニズムと、実際にそれが生体レベルで効果がある可能性を併せて示したことから本研究が順調に成果を示しつつあると言える。
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今後の研究の推進方策 |
細胞の代謝フラックスアナライザーを中心にさらなる機能改善の分子機構の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の研究機関の異動(2020年4月より理研に赴任)に伴い、計画のマウス実験の開始が大幅に遅れたため。2021年度にその分の計画を行う予定である。
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