研究課題/領域番号 |
20K11553
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 孝 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (20597124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミトコンドリア病 / ミトコンドリア呼吸 / 解糖系 / 乳酸 / 乳酸菌 / エネルギー代謝 / 寿命 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリア異常を有するマウス(Ndufs4 KO)において、乳酸の広い濃度域の4種の投与量の経口投与のすべてで健康寿命が延びた。また種々の属種の乳酸菌株8株中6株の投与でも健康寿命が延びた。さらに脳において病理学的検討を行い、マイクログリアの活性化を乳酸、乳酸菌投与のいずれも軽減することを見出した。代謝フラックスアナライザーにおいて、乳酸濃度依存的に解答系が阻害され、ミトコンドリア呼吸が亢進することを見つけた。異なるがん細胞2種で確認されるとともに、ヒトのミトコンドリア病MELASで一般的な変異型mtDNAを有する細胞においても同等の傾向が確認された。解答系の前半部分の返還を担う酵素PFK-1を欠損した細胞においても同等のエネルギー代謝経路のシフトが見られた。すなわち、乳酸はPFK-1より下流の解答系の中間代謝物生成経路からのミトコンドリアTCA回路への炭素源の流入の促進を介してミトコンドリア呼吸を促進するとともに、LDHの逆反応の促進を介して解答系の最終産物である乳酸の産生抑制を引きおこることが想定された。このことがミトコンドリア異常マウスにおいて寿命を延ばす一端である可能性がある。経口投与、もしくは腸内細菌叢による介入でミクログリアで示されるような中枢神経系における炎症を抑制する効果があることは興味深く、今後の解析・進展が期待される。本研究において、ミトコンドリア異常を補完する方法として、微生物の経口投与が有効であるという新たな可能性を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画内容を実行し、概して良好な結果を得ている。解糖系酵素KO実験は計画内容を超えた範囲の実験であり、その実施によりさらに研究を進展できた。
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今後の研究の推進方策 |
積み上げられた結果をもとにさらに仮設を検証できる実験データを積み重ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1%以下の範囲において剰余金が発生したので翌年度分に、計画に従って使用する。
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