研究課題/領域番号 |
20K11560
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
入江 康至 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70303948)
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研究分担者 |
井上 里加子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (10508039)
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, センター長 (80376615)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低蛋白食への適応 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
ニューギニア島の西部に位置するMimika地域の低湿地に居住しているインドネシア人少数民族(主としてカモロ族)を対象者として、調査および試料採取を行った。サゴヤシを主とする伝統的な食生活を送っている人々(n=25)と、現代の一般的な食生活をしている人々(n=25)にインドネシア人医師が面接し、診察および食生活の調査、体組成測定を行った。また、血液と糞便を採取し、血算、血清アルブミン、血清コリンエステラーゼを測定した。さらに、共同研究先のハサヌディン大学医学部にて採取した糞便より腸内細菌叢のゲノムDNAを抽出した。 一方、ニューギニア島少数民族の伝統食群と近代食群の比較に加え、日本人高齢者(地域在住高齢者、施設入所高齢者、介護病棟入院者)との食事・栄養状態の比較を行い、ニューギニア島少数民族近代食群では摂取カロリー・蛋白質摂取量が施設入所高齢者、介護病棟入院者と同等以下であり、ニューギニア島少数民族伝統食群(サゴ群)では摂取カロリーは同等だが蛋白質摂取量が施設入所高齢者、介護病棟入院者の半分程度と非常に少なかった。しかしながら、ニューギニア島少数民族では両群ともにPEMを呈するものはいなかった。 岡山県立大学および国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所での倫理委員会審査にて承認されたことを踏まえ、カルタヘナ法に基づくインドネシア政府の認可を受けた。その後、糞便由来試料を岡山県立大学に輸送し、腸内細菌叢のゲノムDNAは国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所にて次世代シークエンサーによる解析を行った。現在、腸内細菌叢の結果を各種検査結果と統合して解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューギニア島少数民族の伝統食群と近代食群について、食事状況、栄養状態の比較を行い、両群ともにエネルギー摂取量が少ないにもかかわらず栄養状態は良好であった。また、伝統食群では摂取蛋白質量が予測される最低必要量の2/3程度と少ないが、蛋白・エネルギー低栄養protein-energymalnutrition(PEM)には陥っておらず、多変量解析の結果、近代食群とは異なるメカニズムで栄養状態を保っていることが示唆された。これらの結果を学術論文にまとめ、発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンサーによる腸内細菌叢の結果を各種調査結果と統合して解析を進め、特に窒素同化に注目して低蛋白食適応機構を探求する。新型コロナウイルス感染症蔓延のため、当該年度にインドネシアでの追加現地調査およびハサヌディン大学との研究打合せのための訪問ができなかったが、引き続きオンライン打合せを利用しながら既存データを用いた解析を行い学術論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の試料およびデータを用いた解析を行う予定であるが、解析の結果必要となる再解析の費用、インドネシアハサヌディン大学との研究打合せの費用が必要である。
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