研究課題/領域番号 |
20K11571
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
坪井 一人 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80346642)
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研究分担者 |
北風 圭介 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80840545)
竹之内 康広 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30582233)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂質 / セラミダーゼ / N-アシルエタノールアミン / リソソーム酵素 |
研究実績の概要 |
N-アシルエタノールアミンは食欲抑制・脂肪分解などの作用を示す脂質分子であり、生活習慣病の主要な原因である肥満を抑制的に制御すると考えられている。しかしながら、その小腸における生合成・分解機構には不明な点が多い。本研究課題では、小腸において本脂質を生合成・分解する責任酵素を同定することを目的としている。 本年度においては、N-アシルエタノールアミンの分解酵素に焦点を当てた。この分解反応を担う酵素としては、中性~アルカリ性で作用する脂肪酸アミド加水分解酵素と、酸性で作用するリソソーム酵素であるN-アシルエタノールアミン酸性アミダーゼ(NAAA)が専ら解析されてきた。そこで、NAAAとは別のリソソーム酵素であり、セラミド分解酵素として認識されてきた酸性セラミダーゼがN-アシルエタノールアミンの分解反応に関与するか細胞レベルで検討した。まず、ヒト胎児腎臓HEK293細胞に、N-アシルエタノールアミンの生合成に関わるN-アシル転移酵素PLAAT2およびホスホリパーゼD型加水分解酵素NAPE-PLDを安定発現させ、N-アシルエタノールアミンの細胞内含量を上昇させた。本細胞を14C標識エタノールアミンで代謝標識し、酸性セラミダーゼを一過性に発現させたところ、14C標識N-アシルエタノールアミンの細胞内レベルは減少した。質量分析による解析の結果、種々のN-アシルエタノールアミン分子種が減少していることが判明した。同様の結果は、HEK293細胞の非安定発現株でも認められた。次に、ヒト内在性に酸性セラミダーゼを高発現している前立腺LNCaP細胞を用いて、内在性の酸性セラミダーゼについて解析した。siRNA法により本酵素をノックダウンしたところ、N-アシルエタノールアミンの細胞内レベルは上昇した。これらの結果から、酸性セラミダーゼがN-アシルエタノールアミンの加水分解に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のうち、項目「動物細胞株を用いた触媒特性解析」について、N-アシルエタノールアミンの加水分解に酸性セラミダーゼが関与することを細胞レベルで明らかにした。他の項目についても準備を進めており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
項目「小腸上皮様細胞株を用いた機能解析」と「動物を用いた個体レベルの解析」について、小腸に焦点を当てて解析を実施したい。すなわち、小腸上皮様細胞株Caco-2および実験動物の腸管におけるN-アシルエタノールアミンの生合成と分解経路の解析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納品が遅れ、支払いが間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。既に納品と支払いを終えている。
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