研究課題/領域番号 |
20K11573
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
野村 英生 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (60825090)
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研究分担者 |
日下部 徹 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究室長 (60452356)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵臓内脂肪蓄積 / 肝臓内脂肪蓄積 / インスリン分泌制御 / 糖尿病 / 肥満症 |
研究実績の概要 |
近年、膵臓内脂肪蓄積がインスリン分泌能、インクレチン反応性への影響を介して糖尿病の発症に関与している可能性が実験動物において報告され、注目されている。しかしながら、ヒトにおいては未だ十分なエビデンスが得られておらず、実験動物においても膵臓内脂肪蓄積がどのようにしてインスリン分泌制御に関与するのか、その組織学的な変化や分子メカニズムの詳細については不明な点が多い。 本研究の目的は、ヒトと実験動物を対象に異所性脂肪蓄積と糖・脂質代謝パラメータとの関連性を解析し、異所性脂肪蓄積の糖・脂質代謝制御における病態生理学的意義を明らかにすることである。 臨床研究として、国立病院機構京都医療センターの肥満メタボリックシンドローム外来に通院中の肥満症・肥満2型糖尿病患者を対象に、カルテベースの後ろ向き研究を行った。横断研究として肥満症・肥満2型糖尿病患者を対象に、膵臓・肝臓内脂肪蓄積量と体格指数(BMI)および糖代謝パラメータとの関連性を評価したところ、膵臓内脂肪蓄積量はBMI、糖代謝パラメータのいずれとも有意な相関関係を示さなかった。一方、肝臓内脂肪蓄積量はBMI、空腹時血糖、空腹時インスリン値、HOMA-IR、HbA1cとの間に有意な正相関を示した。肝臓内脂肪蓄積は、インスリン抵抗性を惹起することで糖代謝を悪化させる可能性が示されたが、膵臓内脂肪蓄積の糖代謝への影響は小さいと考えられた。また、膵臓への脂肪蓄積の様式は肝臓とは異なる可能性が考えられた。 大学在籍中に行った高脂肪食を負荷したレプチン過剰発現マウスを用いた実験結果をまとめ、筆頭著者として国際雑誌に論文が採択された。高脂肪食負荷レプチン過剰発現マウスでも膵臓などへの異所性脂肪蓄積が起こっている可能性があり、一部、本研究の内容に関連する結果が得られた。 また基礎研究として異所性脂肪蓄積モデル動物の膵臓を含む各臓器のサンプリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は臨床研究として、国立病院機構京都医療センターの肥満メタボリックシンドローム外来に通院中の肥満症・肥満2型糖尿病患者を対象に、カルテベースの後ろ向き研究を行った。しかし、コロナ禍の影響で外来患者数が減少し、当初の予定より解析症例数が少ない 状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究については、国立病院機構京都医療センターの肥満メタボリックシンドローム外来に通院中の肥満症・肥満2型糖尿病患者を対象に、横断研究の症例数を増やし、解析を継続する予定である。また並行して縦断研究として外来通院中の減量前後のデータを用いて膵臓・肝臓内脂肪蓄積の変化と糖代謝パラメータとの関連性を評価する予定である。 基礎研究については異所性脂肪蓄積モデル動物において、種々の治療介入を行い、膵臓内脂肪蓄積とインスリン分泌能との関連について組織学的な評価を含めて詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は臨床研究として対象患者の登録、そのデータ解析を行い、また基礎研究としてモデル動物のサンプリングを行った。次年度は引き続き臨床研究のデータ解析、基礎研究のデータ解析、論文執筆を行う予定である。
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