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2020 年度 実施状況報告書

腸内細菌叢の多様性を決定づける因子としてのビタミンB12・類縁体の役割

研究課題

研究課題/領域番号 20K11576
研究機関静岡大学

研究代表者

西村 直道  静岡大学, 農学部, 教授 (10341679)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードビタミンB12 / 大腸発酵 / 腸内細菌 / プロピオン酸 / コハク酸
研究実績の概要

本研究では、腸内細菌の主要プロピオン酸発酵経路(コハク酸経路)の補因子であるビタミンB12(VB12)が健全な大腸内環境を維持する因子の一つであるという仮説を立て、難消化性糖質を多量に摂取した場合に引き起こされる腸内細菌叢の多様性低下とプロピオン酸発酵障害にVB12の不足が強く寄与している可能性を調べた。
1)高アミロースデンプン(HAS、難消化性糖質の一種)摂取ラットの大腸内VB12濃度変化とプロピオン酸発酵障害
ラットにHASを用量依存的に与えた後、大腸内のVB12濃度、およびプロピオン酸と中間代謝産物であるコハク酸の濃度を測定した。HASの用量依存的に大腸内VB12濃度は低下し、プロピオン酸濃度の低下とコハク酸濃度の上昇が認められた。このとき、コハク酸経路にかかわるメチルマロニルCoAデカルボキシラーゼ(mmdA)遺伝子を有する細菌コピー数がHAS用量に依存して増加した。これは大腸内への糖質流入の増加によるコハク酸経路の利用上昇が大腸内VB12を不足させ、コハク酸経路を障害したためと考えられる。
2)高HAS食摂取ラットにおける腸内細菌叢の多様性維持およびプロピオン酸生成の正常化に及ぼすVB12の影響
1)においてプロピオン酸発酵の障害が認められたHAS投与条件を利用し、HAS食ラットに用量依存的にVB12を投与したときの腸内細菌叢の多様性およびプロピオン酸発酵の変化を調べた。VB12の投与量に依存して細菌叢の多様性は改善し、プロピオン酸濃度の上昇とコハク酸濃度の低下が認められた。VB12用量に依存してmmdA遺伝子をもつ細菌コピー数も増加し、VB12によりプロピオン酸発酵の正常化することが示唆された。また、HASによる細菌叢の多様性低下を改善することもわかった。また、これらの改善に必要なVB12の最小濃度が59 pmol/gであることも判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍により多人数で実験しなければならないものを次年度にまわし、少人数で実施可能な次年度の研究を一部今年度に行った。全体として順調に成果を重ねられたため、計画案に準ずるものが今年度得られた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

腸内細菌により生成されるビタミンB12およびその類縁体の組成と大腸内環境の関係を明らかにするため、ビタミンB12(VB12)の構成成分であるコバルト(Co)を投与したラットを用い、大腸内におけるVB12濃度の変化およびその類縁体生成の変化を追跡し、細菌叢の多様性およびプロピオン酸発酵との関係を調べる。さらに、VB12およびその類縁体を生成する腸内細菌を検索する。
1)Co投与ラットにおける大腸内VB12およびその類縁体生成
高アミロースデンプンを与えたラットにCoを同時投与し、腸内VB12およびその類縁体生成変化を明らかにし、大腸内におけるプロピオン酸発酵および細菌叢の多様性への影響を調べる。
2)VB12およびその類縁体を生成する腸内細菌の検索
ラット盲腸内容物から細菌叢を採取し、Coを添加したVB12無添加で集積培養する。これによりVB12およびその類縁体を生成しうる腸内細菌を同定する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により密にならない条件で研究をすすめるため、少人数で実施可能な次年度に実施予定の研究を一部先行させた。今年度実施する比較的研究費を必要とする実験について次年度に一部移動させたため、次年度使用額を生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] High sucrose diet-induced dysbiosis of gut microbiota promotes fatty liver and hyperlipidemia in rats2021

    • 著者名/発表者名
      Sun Shumin、Araki Yuki、Hanzawa Fumiaki、Umeki Miki、Kojima Takaaki、Nishimura Naomichi、Ikeda Saiko、Mochizuki Satoshi、Oda Hiroaki
    • 雑誌名

      The Journal of Nutritional Biochemistry

      巻: 93 ページ: 108621~108621

    • DOI

      10.1016/j.jnutbio.2021.108621

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 大腸発酵で発生する水素分子は有益な分子として生体の生理に貢献する2020

    • 著者名/発表者名
      西村直道
    • 雑誌名

      FFIジャーナル

      巻: 225 ページ: 369-375

  • [学会発表] シアノコバラミンは高アミロースデンプン過剰投与ラットの大腸内コハク酸蓄積を消失させる2020

    • 著者名/発表者名
      梅田友貴,山田千尋,川瀬貴博,塚原隆充,日野慎吾,森田達也,西村直道
    • 学会等名
      日本食物繊維学会第25回学術集会
  • [学会発表] 大腸へのコバルト供給はラット盲腸内コハク酸蓄積を解消する2020

    • 著者名/発表者名
      山田千尋,梅田友貴,川瀬貴博,塚原隆充,山下寛人,一家崇志,日野真吾,森田達也,西村直道
    • 学会等名
      日本食物繊維学会第25回学術集会
  • [図書] 腸内細菌叢の基礎知識と研究開発における留意点2020

    • 著者名/発表者名
      西村直道
    • 総ページ数
      226
    • 出版者
      情報機構
    • ISBN
      9784865021998

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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