研究課題
これまでにビタミンB12(VB12)を大腸に供給すると、その用量に依存して大腸内細菌のコハク酸経路によるプロピオン酸生成が正常化し、コハク酸の蓄積が解消されることを見出した。また、VB12の構成成分であるコバルト(Co)を大腸に供給することで、一部の細菌がVB12/VB12類縁体を生成し、それにより腸内細菌のコハク酸経路を介したプロピオン酸生成が正常化することを明らかにした。令和4年度の研究として、大腸内に常在するVB12/VB12類縁体生成細菌の同定を試みた。VB12/コバルト無添加飼料を与えたラットの盲腸内容物を嫌気的に採取し、Coを添加したVB12無添加培地で嫌気的に8回集積培養した結果、培地内にVB12が検出された。続いて、寒天を含む同様の培地を用いたロールチューブ法により集積培養液から16個のコロニーを得た。それぞれのコロニーのVB12生成能を調べ、最終的にVB12生成能の高い3コロニーを得た。これらからDNAを抽出後、16S rDNAのシーケンス解析を行いBLAST検索に供した結果、Bacteroides thetaiotaomicron(1コロニー)、Enterococcus spp. (2コロニー)を同定した。これはラット大腸内にVB12/VB12類縁体を生成する細菌が常在することを示すものである。研究期間全体を通じて、難消化性糖質の投与により生じる大腸内へのコハク酸蓄積は大腸内のVB12不足によることが判明し、60 pmol/g以上のVB12濃度にすることでコハク酸蓄積が解消されることを明らかにした。また、Coを食餌を介して大腸に供給すると、大腸内の細菌によるVB12合成が促され、コハク酸蓄積も解消されることを初めて明らかにした。これらには、B. thetaiotaomicronやEnterococcus spp.が一部関与している可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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