研究課題/領域番号 |
20K11579
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
椋田 崇生 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60346335)
|
研究分担者 |
小山 友香 鳥取大学, 医学部, 助教 (30827572)
濱崎 佐和子 鳥取大学, 医学部, 助教 (80735267)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アンギオテンシンII / 海馬 / 神経新生 / 血液脳関門 / 血管透過性 |
研究実績の概要 |
短時間の温熱刺激(37℃・1.5h/日,連続7日間)が海馬の構造と機能、遺伝子発現に及ぼす短期的効果を中心に検討した。まず、単回の暑熱刺激は、海馬神経新生を促進するトリガー因子のひとつと考えているアンギオテンシンIIの血中濃度を刺激直後に一過性に上昇させることをELISAで再確認した。また、こうした個体では、一連の暑熱刺激によって海馬神経新生を促進することも確認した。さらにRNAシークエンス解析から、温熱刺激が海馬でのアミン系調節因子関連遺伝子とともに、水電解質代謝関連遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性が浮かび上がった。短期的効果に加えて、単回の温熱刺激終了直後の影響(単回刺激による急性効果)を調べるために、温熱刺激直後の海馬でもRNAシークエンス解析を行い、現在、遺伝子発現の変動解析を進めている。 血中に血液脳関門非透過性プローブを投与したところ、温熱刺激を課した個体の海馬ではプローブの検出が高まる傾向にあった。この所見は温熱刺激が海馬の血管透過性を亢進させている可能性を示唆することから、次年度は高精度な形態解析を進める予定である。並行して、こうした血管透過性亢進の構造的基盤である血管内皮の微細構造の電顕観察を試みた。しかしながら、脳の血管内腔は、内皮細胞膜表面に糖鎖が卓越しているため、細胞膜表面の構造を観察することは困難であった。微細構造解析については代替解析案を検討しているところである。 当初の計画では昨年度から本年度にかけて、一連の温熱刺激期間を終えて2週間後に生じることが期待される効果(温熱刺激によって生じた新生ニューロンが海馬神経ネットワークで機能し始めるタイミングの効果:長期的効果)についても検討する計画だった。しかしながら、感染症拡大による研究実施制限の可能性があるために先送りせざるを得ない状況にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
感染症の状況によって研究の実施制限が生じるため、動物の準備からサンプリング・解析までに数か月単位に及ぶ実験の実施が困難な状況にあった。また、同様な理由から、実験補助者の継続的な雇用・支援も難しい状況にあった。こうしたことから、研究全般で遅延が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
温熱刺激の長期的効果については実験が滞っているので、感染状況を考慮しつつ優先して取り組む予定である。短期的効果の検討についても遅延が生じているものの、解析データが揃いつつあるので、早急に論文としてまとめていくことにしている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
第一に、当初予定していた実験の実施が困難であったために実験動物や物品の購入、実験補助者の雇用を控えていたことで次年度使用額が発生している。また、論文作成に至っていないため、原稿の英文校正料や論文投稿料が発生していないことや学術集会がオンラインであったために参加旅費等が生じていないことも理由として挙げられる。 本年度は予定している実験に加えて、滞っている実験も実施する予定なので、これらの実験動物と物品の購入に充てる。また、論文発表に係る経費とする。
|