骨格筋量維持と増進は全身の健康状態を左右する。我々の研究グループでは8-プレニルナリンゲニン(8-PN)に、廃用性筋萎縮予防効果があることを報告している。骨格筋量と機能の維持は肥満リスクを低下させるから、8-PNは骨格筋の質的機能の維持に貢献するとともに肥満を抑制すると仮説を立てて研究を行った。 C57BL6マウスに高脂肪食と8-PNとを混合した餌を自由摂餌で与え、骨格筋を摘出した。骨格筋の質的変化については腓腹筋を用いたメタボローム解析を行った。その中で酸化型グルタチオン (GSSG)が8-PNで低下したことをうけ、骨格筋内レドックスバランス調節に8-PNが関与した可能性が示された。グルタチオンレダクターゼは8-PNで低下した。また、高脂肪食では、8-PNによってグルタチオンペルオキシダーゼ-1等の発現量が増加する傾向が認められた。さらに骨格筋中の脂質ヒドロペルオキシドの測定の結果では、高脂肪食により増加した脂質ヒドロペルオキシドを8-PNが抑制した。 次に、摂餌量を各群で合わせたPair-Fed実験を行った。飼育期間中の糞便中への脂質排出量は8-PN摂取による変化が見られなかった。次に、酸素摂取量 (VO2/W)を測定した。VO2/Wは、8-PN摂取群で増加した。これを受け、8-PNのエネルギー代謝亢進効果の作用標的の解明のため、代謝関連遺伝子の発現量をリアルタイムPCRで測定した。視床下部において低濃度8-PNが炎症性サイトカインの発現量を低下させた。骨格筋ではヒラメ筋において、UCP-1、PGC1alpha;の発現量が増加傾向であった。肝臓では、UCP1、UCP3といった熱産生に関連する遺伝子の発現量が8-PN摂取により増加傾向にあった。 これらの結果から8-PNの効果は臓器組織ごとに、その効果用量や効果を発現する餌の条件が異なることが示唆された。
|