本年度は、破骨細胞を活性化した時の腹部大動脈瘤病変を観察すると共に、食品成分による腹部大動脈瘤予防効果の作用機構の解明を試みた。 女性は65歳以上になると腹部大動脈瘤に発症する可能性が高いことが知られているが、これは閉経によるエストロゲン欠乏により破骨細胞が活性化されることが原因である可能性がある。そこで、卵巣摘出マウスと卵巣摘出擬似手術マウスにおいてCaPO4誘発性の腹部大動脈瘤モデルを作成した。その結果、卵巣摘出マウスは卵巣摘出擬似手術マウスと比較し、破骨細胞が活性化され、腹部大動脈瘤の発症を促進させた。これらのデータは、「破骨細胞」は動脈瘤の発症に重要な役割を果たしていることを示唆しており、腹部大動脈瘤の発症機構の解明や予防・治療薬の開発を目指すための重要な知見になると考えられる。 C-グリコシド型イソフラボン・プエラリンは葛 (クズ、Pueraria lobata)に含有するイソフラボンである。申請者らは、プエラリンは破骨細胞の分化を抑制し、腹部大動脈瘤を予防することを報告したが、詳細な作用機構は不明である。そこで、培養細胞(RAW264.7)を用いて、プエラリンによる破骨細胞の分化抑制効果の作用機構の解明を試みた。次世代シーケンサーを用い、RNA-Seqによりプエラリンを添加した破骨細胞において発現変動する遺伝子を網羅的に解析した結果、脂質代謝関連の遺伝子発現に変動がみられた。
|