| 研究課題/領域番号 |
20K11589
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| 研究機関 | 東邦大学 |
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研究代表者 |
土屋 勇一 東邦大学, 医学部, 講師 (10307738)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 増殖因子 / 線維化 / 肝再生 |
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| 研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は世界中で患者が増加している疾患だが、その発症メカニズムには不明な点が多く、治療薬の開発も遅れている。そのため適切なNASH動物モデルの樹立およびこれを用いた解析は、NASHの原因解明と治療法の開発にとって重要である。
コリン欠乏エチオニン添加食(CDE)の投与はマウスにおけるNASH誘導モデルとして広く用いられているが、野生型マウスにおける病態は軽度である。我々は肝細胞特異的に外因性アポトーシスに対する感受性を亢進させたマウス（肝細胞死亢進マウス）にCDEを投与すると、肝細胞の膨化や線維化の亢進などNASHの増悪が起こることを明らかにした。またNASHの増悪に伴って、ある増殖因子（論文投稿準備中のためここではGF1と略す）が特異的に肝臓で発現誘導されることを見出した。
これらの知見を踏まえて本研究では、増殖因子GF1がNASHの増悪に果たす役割を明らかにするため、肝細胞特異的GF1欠損マウスおよび肝細胞特異的GF1過剰発現マウスを作製し解析を行っている。これまでの実験結果から、GF1は肝線維化の促進因子であることを見出した。それにより、GF1はNASHにおける肝線維化治療のターゲットとなり得ると推測される。
臨床においてNASHの確定診断に必要とされる肝生検は極めて侵襲性の高い検査であるため、血液などを用いた低侵襲性のNASH診断方法の開発が待たれている。我々はNASH患者の血清においてもGF1が上昇することを見出している。GF1がNASHの新規血清バイオマーカーとなりうるかについて検討するとともに、NASHの診断に利用できる高感度サンドイッチELISAキットの開発に取り組んでいる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度においては、肝細胞特異的GF1欠損マウスおよび肝細胞特異的GF1過剰発現マウスの作製とその解析を中心に研究を進めた。肝細胞特異的GF1単独欠損マウス自体は顕著な表現型を示さなかったが、肝細胞死亢進マウスにおいてさらにGF1を欠損させたところ、CDE投与による肝障害と肝線維化が軽減することを見出した。一方で肝細胞特異的GF1過剰発現マウスを作製したところ、通常飼育時でも対照マウスと比較して肝臓が1.5倍に腫大しており、また加齢に伴って肝嚢胞を生じることが判明した。組織解析の結果、肝細胞の増殖が誘導されたが、同時に肝線維化が亢進していた。したがってGF1はNASHにおける肝線維化促進因子であると推測された。またGF1過剰発現マウス肝では、線維化領域の近傍で肝細胞とは異なる小型の新規細胞群が増殖していることを見出した。
加えて我々はGF1がNASH患者の血清で上昇することを見出したが、この時用いた市販のELISAキットはあまり感度が高くなかった。そこで我々は、NASHの診断に利用できる高感度サンドイッチELISAキットの構築を目指して、GF1に対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを複数樹立した。これまでに感度・特異度とも十分なGF1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを1株単離した。
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| 今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降においては、GF1による肝線維化誘導のメカニズムについて解析を進める予定である。特にGF1過剰発現マウス肝の線維化領域の近傍で増殖する小型の新規細胞群は、肝線維化に重要な役割を果たすと考えられるので、表面マーカーや遺伝子発現パターンの解析によりその特性を明らかにする。
GF1のサンドイッチELISAキットを構築するためには、エピトープが異なるモノクローナル抗体が少なくとももう一種類必要であるため、ハイブリドーマのスクリーニングをさらに進める。
さらに我々は、NASH以外の肝障害におけるGF1の関与を調べるため、マウスに様々な肝障害を誘導して、肝臓GF1の発現誘導と血清GF1増加の関係を調べている。その結果ある特定の肝障害においては、肝臓でGF1の発現が変化しないにも関わらず血清GF1が増加すること、この時に腎臓でGF1の発現が上昇することを見出している。この結果は肝障害を腎臓が感知して応答する新たな臓器連関の存在を示唆しており、肝臓-腎臓連関を制御する分子メカニズムの解明を目指す。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
年度末の緊急支出に備えていたが不要になったため、次年度使用額に繰り越すこととした。翌年度分として請求した助成金と合算して、消耗品の購入に用いる予定である。
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