肥満を伴う2型糖尿病患者では、酸化ストレスや慢性的な炎症が全身の血管合併症を進行させることが知られています。中でも、尿酸代謝に関わるキサンチン酸化還元酵素(XOR)の働きが強くなっていることが、最近注目されています。本研究では、インスリンを分泌する膵β細胞(MIN6)と、インスリンの働きにより血糖値を取り込む脂肪細胞の両者に遺伝子操作を施して、インスリンの分泌と作用の両者の障害に、XORがどのように影響しているかを解き明かすことで、抗糖尿病薬の創薬に繋がる成果を目指しています。予備実験を行ったところ、MIN6細胞のうち、インスリン分泌能が悪いクローン株において、還元型XORであるキサンチン脱水素酵素(Xdh)の発現が多くなっていることが明らかになりました。そこで、インスリン分泌能が悪いMIN6細胞クローン株において、shRNAによりXdhの発現を抑制することで、インスリン分泌能が改善するかを検討してみることにしました。非分裂細胞において安定的な遺伝子導入操作を行うために、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いる手法を選択していますが、XdhのcDNAが約5 kbpと大きいため、我々は、脂肪細胞やMIN6細胞でより遺伝子導入効率が良いとされているAAV serotype 8用のplasmidを用いて、Xdh shRNAを発現するAAVを精製しました。精製したAAVを、インスリン分泌能が悪いMIN6細胞に導入し、Xdh蛋白の発現が抑制されることを確認しました。Xdh shRNAを導入したMIN6細胞では、コントロール細胞と比較して、有意差は認められませんでしたが、インスリン分泌能が回復する傾向が見られました。
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