研究課題/領域番号 |
20K11594
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
津川 尚子 大阪樟蔭女子大学, 健康栄養学部, 教授 (30207352)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビタミンD / カルシウム / 紫外線 / ビタミンD補給 / 授乳婦 / コロナ禍 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる課題は、[①ビタミンD栄養と日常生活および身体的・精神的疲労の関連性の検討、②積極的取り組みを促す効果的ビタミンD栄養改善方法の探索、③食事からの効率的ビタミンD補給方法の検討、④ビタミンD必要量におけるカルシウム摂取量の影響の検討]である。申請者は、母乳中ビタミンD濃度が約30年前に比べて約1/2に低下していることを明らかにしており、課題②、③において授乳婦の栄養改善の対策が重要と考え、授乳婦に対するビタミンD補給効果を詳細に調べるために、単回補給後3日間の経時的な母乳採取を行い、解析を行っている。母乳の分析は概ね終了した。また、課題④について、課題①で集積した疫学データをもとに、各年代におけるカルシウム摂取量と血中25(OH)D濃度の関係を解析した。年齢、性別、戸外活動時間、日光を避ける行動、食事、疲労度、喫煙などビタミンD栄養に関連する因子を予測因子とした重回帰分析を行った結果、カルシウム摂取量が血中25(OH)D濃度に対する重要な影響因子となるエビデンスを得た。これに加えて、ラットを用いた動物実験にも着手した。さらに、コロナ禍におけるビタミンD栄養低下の現状についても調査し、学術論文に受理された。この論文では、R2の緊急事態宣言後、年間を通して最も高濃度となるべき9月初旬の血中25(OH)D濃度を評価した結果、血中濃度は例年の1/2程度に低下し、低ビタミンD栄養状態が真冬と同レベルにまで低下していた現状を報告することができた。対象者のビタミンD摂取量は食事摂取基準目安量の1.5倍であったが、緊急事態宣言解除後の7,8月も対象者の外出日数は例年の40~60%程度にとどまり、これがビタミンD栄養低下の主な原因と推察された。この結果は、ビタミンD栄養改善対策を図る上で非常に重要な知見であり、本研究の遂行のためにも有用な情報となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(R2)年度は、本研究の主たる4つの課題[①ビタミンD栄養と日常生活および身体的・精神的疲労の関連性の検討、②積極的取り組みを促す効果的ビタミンD栄養改善方法の探索、③食事からの効率的ビタミンD補給方法の検討、④ビタミンD必要量におけるカルシウム摂取量の影響の検討]のうち、①、③に着手し、一定の成果を得ることができた。R3年度は、当初R2年度に実施を計画していたもののコロナ禍の影響で開始を見送っていた④の研究に着手した。また、最近の若年女性のビタミンD栄養低下に関連して、授乳婦のビタミンD栄養低下が母乳のビタミンD濃度低下を招いている問題に対する対策の一環として、授乳婦へのビタミンD補給効果の詳細な検討に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
R3年に着手した課題については、R4も引き続き解析を継続する予定である。R4年度中には、課題②についての具体的な実施計画を作成し、着手する予定である。また、R2年度、R3年度の研究結果について、順次論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年(R2)度は、コロナ禍の影響により使用研究費が予定より少額となった。R3年度は、開始時点ですでに次年度使用額が発生した状況であったこと、また、R3年度もコロナ禍の状況を注視しつつ研究を実施したことから、予定の使用額より少額となった。R4年度は、R3年度に実施予定であった動物実験を実施することから、コロナ禍の影響で使用できなかった助成金を順次使用しながら研究を進める予定である。
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