本研究の主たる課題は、[①ビタミンD栄養と日常生活および身体的・精神的疲労の関連性の検討、②積極的取り組みを促す効果的ビタミンD栄養改善方法の探索、③食事からの効率的ビタミンD補給方法の検討、④ビタミンD必要量におけるカルシウム摂取量の影響の検討]である。申請者は、母乳中ビタミンD濃度が約30年前に比べて約1/2に低下していることを明らかにしており、課題②、③において授乳婦の栄養改善の対策が重要と考え、前年度には授乳婦に対するビタミンD補給を行うとビタミンD血中濃度の上昇に付随して母乳中濃度も5~10時間目にピークを示すことを確認したが、乳児への補給量としてはやはり十分量ではないことを確認した。また、課題④について、課題①の集積データをもとにカルシウム摂取量が血中25(OH)D濃度に対する重要な影響因子となるエビデンスを得、ラットを用いた動物実験では低カルシウム摂取量が血中25OHD濃度の半減期短縮を招くことを確認した。R5年度は、課題②に関してVDDQ-Jを用いた栄養指導効果の検証と「VitD栄養改善マニュアル(Yes/Noチャート形式による提案)」の作成に取り組み、検証を進めている。また、ビタミンD栄養改善方法の一つとして新たなビタミンD含有食品をLC-MS/MS分析により探索した結果、これまで知られていなかった新規ビタミンD含有食品を発見し、紫外線照射によってキノコ類以外にもビタミンD含量を増加させることができる食品の存在を見出すことができた。現在、これらの結果を公表するための論文作成に着手している。
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