研究課題/領域番号 |
20K11596
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
赤木 一考 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 特命助教 (30794424)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 老化 / 食餌制限 / ショウジョウバエ / アミノ酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
本研究は、寿命延伸効果が知られている食餌制限の作用機序について、腸管グルタミン酸トランスポーターの役割に注目し解析を進めている。これまでの解析から、グルタミン酸トランスポーターであるdmGlutとEAAT1の発現が、食餌制限下の腸管において顕著に上昇することが明らかになった。また、それぞれの遺伝子を腸管特異的にノックダウンすると、食餌制限による寿命延伸効果が減弱することを示した。本年度は、脂質代謝およびグルタミン代謝の観点から研究を行った。そして、腸管特異的dmGlutノックダウン個体の脂肪体において、食餌制限下で脂肪滴の蓄積異常が起きることを示唆する結果を得た。また、グルタミンをグルタミン酸へ変換する酵素であるGLSの発現レベルを調べた結果、食餌制限下で腸管での発現が低下する一方で、脂肪体では発現レベルが上昇することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに、腸管におけるdmGlutとEAAT1の役割が食餌制限による寿命延伸効果に必要であることが明らかになった。近年、dmGlutが脂質代謝に関わることが報告された(Zhao and Karpac, Cell Metabolism, 2021)ため、本年度は脂質代謝およびグルタミン代謝に注目し解析を行った。まず、腸管特異的dmGlutノックダウン個体の脂肪体において脂肪滴を染色したところ、食餌制限下で脂肪滴の蓄積異常が起きることを示唆する結果を得た。このことから、グルタミン代謝を介して腸管と脂肪体に相互作用があることが示唆された。また、グルタミン代謝の第一ステップであるグルタミンからグルタミン酸への変換を担うGLSの発現をqRT-PCR法で調べた結果、GLSは食餌制限下で腸管での発現が低下し、脂肪体では発現レベルが上昇することがわかった。また、脂肪体におけるEAAT1の発現が、食餌制限下で顕著に減少することが明らかになった。したがって次年度は、グルタミン代謝を介した腸管と脂肪体の相互作用に注目して解析し、論文化を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
腸管特異的にdmGlutおよびEAAT1をノックダウンあるいは強制発現した個体の脂肪体において脂肪滴染色を行う。さらに、同様の個体を用いて飢餓耐性実験、中性脂肪量および体液中脂肪量の定量を行う。これらにより、腸管と脂肪体の相互作用について調べる。さらに、GLSの発現を腸管および脂肪体で遺伝学的に操作し、脂質代謝や寿命への影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は他業務のエフォート率が高く、本研究を遂行する時間の確保が難しかったため、補助事業期間の延長申請を行った。次年度では、学会参加費や論文投稿費用として本研究費を使用する予定である。
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