研究課題
肥満症・代謝性疾患などの生活習慣病に対する治療法として食事療法は最も基本的かつ実践可能なアプローチである。近年、食事療法の多様性の一環として、低炭水化物高脂肪食や中鎖脂肪酸食などのケトジェニック食が再評価されており、ケトン体を介した生理調節機能を背景として栄養生理学的な観点から臨床応用が期待されている。本研究では、中鎖脂肪酸食負荷に伴う各種代謝表現型の変動解析を実施した結果、ケトン体のみならず、中鎖脂肪酸もまた中鎖脂肪酸受容体を介して、抗肥満・糖代謝改善作用を発揮することが認められた。中鎖脂肪酸を構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸油は、生体内での様々な生理調節作用に関与する可能性が示唆されており、これまでにも手術後の栄養管理や未熟児への栄養補給、また小児のてんかん治療食などを対象に臨床栄養学的な観点から医療用食品として利用されてきた。ところが、中鎖脂肪酸油による病態改善効果の分子実体としての中鎖脂肪酸の認識機構とそれに続く機能発現を含めた詳細な分子作用機序は明らかにされていなかった。一方、食由来の遊離脂肪酸をリガンドとする細胞膜上受容体としてこれまでにいくつかのGPCRsが同定されており、脂肪酸が単にエネルギー源として利用されるだけでなく、様々な細胞内プロセスに関係するシグナル分子として作用することが明らかになっている。本研究では中鎖脂肪酸受容体GPR84の機能解析を行う一環として、野生型マウス及びGpr84遺伝子欠損マウスを対象とした食事誘導肥満モデルにてGPR84が代謝表現型に及ぼす影響を評価した。その結果、「中鎖脂肪酸-GPR84」シグナルが代謝性疾患の改善に寄与する可能性が示唆された。今後、GPR84と中鎖脂肪酸の相互作用の更なる解明がGPR84を標的とした新規代謝性疾患治療薬の開発や食事介入を通じた予防医学への応用に繋がることが期待できる。
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