研究課題/領域番号 |
20K11610
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研究機関 | 桐生大学 |
研究代表者 |
影山 晴秋 桐生大学, 医療保健学部, 教授 (00433839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経ペプチド / 免疫染色 |
研究実績の概要 |
ガラニン様ペプチド(GALP)は摂食調節に関わる神経ペプチドである。これまでの報告より、ラットにおいてGALPは視床下部弓状核に限局していることが明らかとなっている。しかしながらGALPは循環血液中でも存在していることから、脳以外の器官においてもGALPを産生している可能性がある。そこで種々の器官におけるGALP mRNAの発現をReal-Time PCR法を用いて網羅的に検索したところ胸腺に高い発現量がみられた。そこで本年度はラット胸腺でのGALP産生細胞の同定をするために免疫組織染色法を行った。これまでGALP特異的抗体は自家製のものが多く、市販抗体を用いた免疫組織染色はあまり行われていなかった。したがってラット胸腺での局在を同定するために、市販されている抗GALP抗体を検索し、抗体の有効性を評価した。抗GALP抗体の特異性は、これまでの視床下部での免疫染色の結果と比較ながら行った。コルヒチン投与したラットの脳を摘出し、視床下部のパラフィン切片を作製した。市販されている4種類の抗体を用いて、ストレプトアビジン―ビオチン複合体によるDAB染色を行った。その結果、2つの抗体でこれまで報告している弓状核で免疫陽性の神経細胞が観察された。これら2つの抗体を使いラット胸腺の連続切片上で免疫染色したところ、ほぼ同一の細胞に免疫陽性反応が観察された。コルヒチン投与した胸腺であるため、正常組織でも免疫陽性が観察されるか、免疫陽性細胞がどの種類の細胞なのかを同定する必要がある。細胞同定するにあたり、凍結切片上での蛍光染色が可能かの確認が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、胸腺でガラニン様ペプチド(GALP)産生細胞を同定することを目的とした。しかし市販されているGALPに対する特異的な抗体についての情報は全くないため、免疫組織染色に利用できる市販抗体を検索、あるいは特異抗体を作製することまでを視野にいれる必要があった。これまで報告した方法によってラットの視床下部で免疫染色を行い、抗体の有効性を評価した。その結果、4社から発売されている抗体のうち、2社の抗体が使えることが判明した。またこの2社の抗体を使って胸腺を染色し、免疫陽性細胞を観察することができた。一方、抗GALP抗体によって、胸腺の細胞が免疫陽性となったが、この陽性細胞がどの種類の細胞なのかを同定することまでは至らなかった。しかし、1年目は特異的な抗体を探すことを主目的にしていたので、順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度に引き続き、GALP産生細胞の同定 凍結切片で抗GALP抗体による蛍光染色が可能であるかを確認した後、抗CD40抗体や抗CD11c抗体との免疫二重染色を行い、GALP産生細胞の同定を行う。 2.GALP脳室内投与による胸腺への作用および二次リンパ組織に及ぼす効果 1)GALPを脳室内投与し、3時間後4%パラホルムアルデヒドで灌流固定を行う。実験1で検討したGALP産生細胞の数の増減を免疫組織学的手法によって検討する。 2)リポポリサッカライド(LPS)または生理食塩水を腹腔内に投与し、深部体温上昇によって炎症が起きていることを確認する。GALPまたは生理食塩水を脳室内投与し、6時間後に4%パラホルムアルデヒドで灌流固定を行う。二次リンパ組織である回腸パイエル板を摘出し、パラフィン切片を作成後、パイエル板のリンパ小節にある胚中心と傍濾胞域のリンパ球の変化を免疫組織学的に観察し、GALPの免疫機構への関与を検討する。GALP投与後の時間については検討をくわえる。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体を複数購入するために、消耗費を計上したが、予想よりも優れた抗体を見つけることができたので、差額が生じた。次年度は、この差額を利用して、細胞同定するための抗体を数種類購入する予定である。
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