研究課題/領域番号 |
20K11613
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
佐久間 理英 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (10551749)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リン / 血清リン濃度 / 日本人 / 食事摂取基準 |
研究実績の概要 |
血清リン濃度の上昇は、血管平滑筋と血管内皮の両面から動脈硬化を促進することで種々の疾患の発症や死亡に関与する。従来、血清リン濃度の上昇による健康障害は、リンの基準値を大幅に超える慢性腎臓病や透析患者における問題とされてきた。しかし近年、血清リン濃度が正常範囲内であっても高値であるほど、血管石灰化や死亡リスクを増大させることが健常者において報告された。よって、健常時から血清リン濃度を適正に管理することが、動脈硬化を予防し健康長寿を達成するために重要であり、個人の代謝特性に応じた最適な量のリンを摂取することが重要であると考えられる。 日本人の食事摂取基準は、健康の保持・増進を目的に、摂取することが望ましい栄養素の量を定めたものであるが、リンについては日本人における出納・代謝に関するエビデンスが不足しているため、推定平均必要量や推奨量の策定に至っておらず、最適な摂取量は十分に解明されていない。そこで本研究は日本人を対象として、性別、体格・体組成、身体活動、食行動などの因子がリン代謝に及ぼす影響を解明することで、日本人に対応したリン摂取基準の策定に貢献することを目的とする。 2021年度は、健常者を対象として、リン含有量を事前に分析した試験食の負荷試験を行い、尿中リン排泄量および血中リン代謝指標を用いて、リン代謝に及ぼす性別、体格・体組成の影響を検討することを計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定していたヒト試験を実施することができなかった。そのため、参考となる文献の検索や、試験食の検討、また研究環境の整備をするなどして次年度以降の円滑な研究実施に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、2020年度に実施できなかった、リン代謝に及ぼす個人特性の影響を検討するため、健常者を対象としたヒト試験の実施を予定していた。しかし、度重なる新型コロナウイルスの感染拡大により、ヒトとヒトとの接触や飲食を伴う試験の実施が困難であった。加えて、研究代表者が所属先を異動したため、異動先での研究体制を整えることに時間を要してしまい、試験の実施に至らなかった。そのため、進捗状況を「遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染対策を講じたうえでヒト試験を実施する。具体的には、以下の感染対策を行う。①対象者に対し、発熱、咳等の感染が疑われる症状の有無を確認し、症状がある場合は試験への参加を延期または中止する。②試験会場入室時の検温と手指のアルコール消毒を行い、マスクの着用を必須とする。③試験食摂取時は、座席間隔を十分に空け、対象者の間にアクリル板を設置し、食事中の会話を禁止する。④試験食を提供する際、提供者はマスク、使い捨て手袋を着用し、衛生的な提供を心掛ける。⑤試験室の換気を行う。⑥体組成計や採血の上肢台など対象者が接触する物は、その都度アルコールで消毒する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大および研究代表者の所属先異動に伴い、当初予定していたヒト試験を実施できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度は、感染対策を講じた上でヒト試験を実施する。そのため次年度使用額は、試験食、採血・蓄尿検査の消耗品、対象者への謝金、血液検査委託費用の他、感染対策に必要な物品(アルコール、パーテーションなど)の購入に使用する。
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