研究実績の概要 |
家族性複合型高脂血症 (FCHL, familial combined hyperlipidemia) は家系内にVLDLとLDLが増加する病態であるが,表現型( IIa, IIb, IV) が家系内で多様であること,また個人内で表現型が変動することが特徴である.その成因についてインスリン抵抗性やTG代謝異常が推定されるが,遺伝子レベルでは十分に解明されていない。本邦ではHDL増加の病態が血清コレステリルエステル転送蛋白 (CETP) や肝性リパーゼ(LIPC)の遺伝子バリアントの影響でそれらの活性低下が比較的高頻度に見受けられるので,欧米とは異なる遺伝背景の病態が存在すると考えられる。 そこで 個人の表現型においてVLDL, LDL, HDLのいずれか二つの分画が増加し,一時期においてIIb高脂血症を認めた患者群において二次性要因を精査することと共に,リポ蛋白リパーゼ活性に影響すると考えられる内因性インヒビターの蛋白定量および酵素活性を測定し, 遺伝子バリアントを含めて複合型高脂血症病態との関連性を検討する. 2020年度は新たに複合型高脂血症リストの作成に取り組み,10例を新規登録した.また,既報の一般人集団における血清脂質値とアンジオポエチン様蛋白 (ANGPTL8) 遺伝子の多型Xとの関連性を190例で検討し,その多型X低頻度アレルで高HDL低TG血症との関連性を認めた.この集団においてANGPTL3とANGPTL4では遺伝子頻度0.01以上のミスセンス関連SNPは検出しなかった.
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