研究課題/領域番号 |
20K11622
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中川 敏幸 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00271502)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 小胞体ストレス / 海馬神経新生 / 統合的ストレス応答 / ダブルコルチン / マイクロRNA / 長期肥満 |
研究実績の概要 |
現在日本では、高齢者の25%が認知症またはその予備群とされ、有病率は85歳以上で年齢とともに40%から80%に増加する。超高齢化社会を迎える日本においては、認知症との共生および発症を遅らせ進行を緩やかにする予防法の開発が喫緊の課題である。 高齢者の認知症発症に、運動不足(寄与率:3%)や肥満・糖尿病(各寄与率:1%)が関与することが示唆され、肥満や糖尿病の病態である小胞体ストレスが発症や重症化の要因のひとつとして注目されている。しかしながら小胞体ストレスの制御機構の全容は未だ明らかでなく、小胞体ストレスを標的とした認知症発症予防や重症化遅延法は確立されていない。 そこで本研究では、アルツハイマー病モデルマウスと野生型マウスに高脂肪食を長期間(各43週間、67週間)与え、長期間継続する肥満・糖尿病マウスを作製した。レプチン受容体欠損マウスは6週齢で肥満を認め60週齢までのマウスを解析した。 長期肥満マウスの認知障害を物体位置認識試験にて解析したところ、移動させた物体の探索時間が有意に短くなり、行動の異常を確認した。長期肥満マウスの海馬において、小胞体ストレスシグナルの活性化をウエスタンブロットと免疫組織染色にて確認し、未分化神経細胞に特異的に発現するダブルコルチン陽性の神経突起が短いことも確認した。マウス海馬から神経幹細胞を培養し、分化中の細胞に小胞体ストレス刺激を行い、ダブルコルチンの発現を調べると、ダブルコルチンmRNAが減少した。この減少がDicerのノックダウンにて回復することから、小胞体ストレス刺激後にRNA抽出を行い、マイクロRNAシークエンシングにてコントロールと比較した。小胞体ストレス刺激をした未分化神経細胞にて、miR-148a-5p, miR-129b-3p, miR-135a-2-3pの発現増加とmiR-1247-3pの減少を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
長期肥満を伴うアルツハイマー病モデルマウス(APP23)及び肥満糖尿病モデルマウスの海馬脳において、神経新生細胞の分化が阻害されていることを明らかにし、その機構の一端を解明した。成果を論文化し、プレスリリースした。科学新聞および様々なWebニュースに取り上げられ、研究成果を社会や国民に発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の成果に基づき、“海馬神経新生-小胞体ストレス―miRNA-ダブルコルチンmRNA分解”を認知症の発症や進行の仕組みに関与する経路と考え、この経路の制御法の開発とヒトダブルコルチンmRNAを分解するmiRNAの同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は計画通り遂行し、順調に成果を得ることができたため次年度使用額が生じた。
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備考 |
プレスリリース(令和4年1月24日)
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