研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎える日本において、認知症との共生および発症を遅らせ進行を緩やかにする予防法の開発が課題である。 認知症発症に肥満や糖尿病の関与が示唆され、肥満や糖尿病の病態である小胞体ストレスがその要因のひとつとして注目されている。しかしながらその要因の機構の全容は未だ明らかでなく、認知症発症予防や重症化遅延法は確立されていない。 そこで本研究では、アルツハイマー病モデルマウスと野生型マウスに高脂肪食を長期間与え、長期間継続する肥満・糖尿病マウスとレプチン受容体欠損マウスを解析した。 長期肥満マウスの認知障害を物体位置認識試験にて解析したところ、移動させた物体の探索時間が有意に短くなり、行動の異常を確認した。長期肥満マウスの海馬において、小胞体ストレスシグナルの活性化をウエスタンブロットと免疫組織染色にて確認し、未分化神経細胞に特異的に発現するダブルコルチン陽性の神経突起が短いことも確認した。マウス海馬から神経幹細胞を培養し、分化中の細胞に小胞体ストレス刺激を行い、ダブルコルチンの発現を調べると、ダブルコルチンmRNAが減少した。マイクロRNAシークエンシングにより、小胞体ストレス刺激をした未分化神経細胞にて、miR-148a-5p, miR-129b-3p, miR-135a-2-3pの発現増加とmiR-1247-3pの減少を認めた。 前年度までの成果を踏まえ、マウス海馬神経幹細胞を培養し、小胞体ストレス刺激に伴うマイクロRNAの発現変化をTaqMan法により解析した。マイクロRNAシークエンシングと同様に、コントロール処理に比しそれぞれのマイクロRNAの発現の変化を確認した。さらに、ATF4遺伝子欠失マウスから作成した海馬神経幹細胞において、小胞体ストレス刺激に伴うダブルコルチンの発現解析と各マイクロRNAの発現の変化をコントロール処理した細胞と比較解析を行った。
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