本研究は、若年期の食塩摂取過剰が成人期以降に発症する高血圧の原因かどうかを明らかにし、さらに幼少期の食塩過剰摂取による高血圧発症時の交感神経活動の動向を、つまり、高血圧発症に交感神経活動がどのように影響を及ぼすかに関して、実際にラットの交感神経活動を直接計測する事で検討する事を目的としている。R2年度、R3年度の検討結果を踏まえ、R4年度も、ラットの3週齢から4%食塩食を摂取させて、どの時点で動脈圧が上昇するかを、R3年度よりも早い時期である、ラットの5週齢で手術し6週齢から計測するグループと、11週齢で手術し12週齢で測定する群とで検討した。 (方法)ラットの5週齢時あるいは11週齢時に腎および腰部交感神経活動測定の為の電極と動脈圧と心拍数測定のためのテレメトリーを慢性留置した。6あるいは12週齢で測定を開始し、その後4週間連続測定を行なった。さらに、手術開始時期を変えて動脈圧がいつ上昇するかの検討を行った。(結果)ラットにより早い時期から動脈圧が上昇する個体と週齢が上がって動脈圧が上昇する個体、週齢が上がっても動脈圧の上昇がみられない個体に分かれた。しかし、いずれの個体においても、動脈圧上昇前あるいは上昇時に、腎と腰部交感神経活動どちらとも増加は観られなかった。また、心拍数も交感神経活動と同様に、増加も観られなかった。そのため、食塩の過剰摂取で生じる動脈圧上昇に、交感神経活動の過剰亢進が原因である事は示せなかった。
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