研究課題/領域番号 |
20K11624
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上番増 喬 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (10581829)
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研究分担者 |
高橋 章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (90304047)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケトン体 |
研究実績の概要 |
ケトン体は、それ自体が代謝され細胞のエネルギー源となるだけでなく、エピゲノム修飾を調節する作用、Gタンパク質共役受容体を介した様々な機能、またメカニズムは不明であるが、食欲や炎症反応を調節するなど様々な作用を有している。細胞内のケトン体濃度は、合成、分解、細胞内局在、細胞内・外の輸送の4つのケトン体代謝の流れにより調節される。細胞レベルで、ケトン体代謝の流れを検討した結果、腸管上皮細胞におけるケトン体合成と細胞内外の輸送活性は、mammalian target of rapamycin complex 1 (mTORC1)により調節されることが明らかとなった。培養液中の栄養素の含有量を変化させ、mTORC1の活性をコントロールすることでケトン体の産生が増加し、この増加はケトン体合成の律速酵素である3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA synthase 2のノックダウンにより低下した。またmTORC1の活性と独立してケトン体の細胞内・外の輸送を制御する因子としてケトン体輸送単体1および2を同定した。これらの輸送単体は、腸管上皮細胞の細胞膜上に発現しその発現はノックダウンベクターのトランスフェクションにより減少した。その際のケトン体の細胞内から細胞外への輸送は低下した。この輸送担体を介したケトン体の輸送はmTORC1の活性に非依存的であることが明らかとなり、これまでに報告されていない機構でケトン体の細胞内外の輸送が制御されていることが示唆され、現在その役割の詳細を検討している。また、ケトン体代謝異常が生じた際の生体代謝に及ぼす影響を検討するため、遺伝子改変マウスを準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、①細胞レベルで、ケトン体代謝酵素群、及びトランスポーター群をノックダウンした細胞を作成しケトン体代謝の解析を行った。現在、過剰発現細胞の作成中でありおおむね順調に進行している。 ②次に、ケトン体代謝酵素の遺伝子改変動物やケトジェニック食を使用し、生体内でケトン体代謝の流れが変化した動物における生活習慣病などの表現型への影響を検討する予定である。現在、遺伝子改変マウスの作成中であり、遺伝子改変動物の準備に予定よりやや時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験では、ケトン体代謝酵素群、及びトランスポーター群を過剰発現またはノックダウンし、各細胞におけるケトン体代謝への影響と細胞の機能への影響を解析する。腸管上皮細胞では、特に細胞の分化やタイトジャンクションの構成に関する研究を行う予定である。また、他の細胞株を用いて、同様の研究を行っていく予定である。 動物実験では、Agouti vaiable yellow(Avy)マウスを用いて、ケトン体遺伝子改変マウスやケトジェニック食摂取による胎生期のケトン体代謝変化のDNAメチル化への影響をスクリーニングする。Avyマウスはすでに準備できており、ケトン体遺伝子改変マウスの予備検討を行っている。またケトジェニック食摂取モデルの確立のための予備実験を行っている。次年度では、ケトン体代謝関連遺伝子改変マウスやケトジェニック食摂取マウスを摂取したマウスから産まれたF1マウスに通常食または高脂肪食を摂取させ、体重、組織重量や血糖値などの血液パラメーター、全身性の耐糖能およびインスリン感受性、肝臓における糖新生能、単離膵島のインスリン分泌能等と腸内細菌叢を評価していく予定である。
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