慢性腎臓病(CKD)の食事療法では、たんぱく質(アミノ酸)の摂取制限が推奨されている。一方、サルコペニア(SP)の食事療法では、たんぱく質(アミノ酸)の積極的な摂取が推奨されている。慢性腎臓病とサルコペニアの合併症(CKD-SP)は、高齢者において高頻度でみられるが、それぞれの食事療法(たんぱく質の摂取制限or 積極的な摂取)が適用できない。一方、ケト酸(窒素を含まないアミノ酸の代謝物)は、アミノ酸と相互変換(アミノ基転移反応)するため安全性が高く、CKDにおいて体内に蓄積しやすい尿素や尿毒素(窒素を含む老廃物)を生じさせないことが特徴である。本研究では、筋芽細胞を用いてCKD-SPモデルを構築し、このモデルを用いて以下のケト酸の生理作用を明らかにした。 筋芽細胞にインドキシル硫酸(代表的な尿毒素)を添加すると、筋芽細胞の筋管細胞への分化が阻害され、ミトコンドリア生合成が低下した(CKD-SPモデル)。ウルソル酸は、インドキシル硫酸が誘導するこれらの阻害を抑制することを明らかにした(このモデルを阻害するケト酸を見出すことはできなかった)。 さらに、グリオキシル酸(グリシンのケト酸代謝物)は、筋細胞内でグリシンに変換された後、さまざまなアミノ酸へと代謝された。グリオキシル酸は、デキサメサゾンが誘導する筋萎縮を阻害した。さらに、グリオキシル酸は筋芽細胞から筋管細胞への分化を促進することで、ミトコンドリアの生合成を促進することを明らかにした。
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