研究課題/領域番号 |
20K11635
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
伴野 勧 愛知医科大学, 医学部, 助教 (60554011)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機能性脂肪酸 / 抗炎症作用 / 破骨細胞 / 奇数鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
乳製品やサバやマグロなど青魚に豊富に含有する長鎖奇数鎖脂肪酸(Odd Chain Fatty acids: OCFAs)は肥満や糖尿病患者における血中濃度が健常者と比較して低値を示すことやCRPや炎症性サイトカインであるIL-6の値が、血中OCFAs濃度が高い程低値を示すなどOCFAsに抗炎症機能を有する可能性が示唆されている。しかし、OCFAsの機能性研究はほとんど皆無に等しく、生活習慣病との関わりについても分かっていない。 本研究では、OCFAsの抗炎症作用が骨の健康寿命の延伸に寄与できるかどうかを明らかとすることを目的として、マウスより採取した骨髄細胞や培養細胞から分化誘導した破骨細胞および老年性骨粗鬆症モデルマウスを用いて、これらシグナル因子の発現や翻訳後修飾の有無を通じて奇数鎖脂肪酸の抗骨粗鬆症作用機序の解明を試みている。 R2年度では、マクロファージ様細胞RAW264.7やC57BL/6Jマウス大腿骨随より採取した骨髄細胞からM-CSFおよびRANKLを添加する際に、同時に脂肪酸の添加を行い、破骨細胞分化誘導の進行や抑制効果を確認した。その結果、pentadecanoic acid (C15:0)やheptadecanoic acid (C17:0)の奇数鎖脂肪酸は生理的濃度で顕著な破骨細胞分化誘導阻害効果を示した。また、R2年度でC15:0やC17:0は破骨細胞分化誘導時に活性化するNF-kBシグナル経路を阻害していることが見出されたことから、R3年度では具体的な破骨細胞分化抑制メカニズムの解明のため、RAW264.7細胞やマウス大腿骨由来骨髄細胞の破骨細胞分化時のProteomics解析を行った結果、数多くのタンパク質発現がC17:0の添加によって変動している事が明らかとなった。そのうち、オートファジーに関連するタンパク質群の発現変動が顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度では、マウス単球性マクロファージ様細胞RAW264.7やC57BL/6Jマウス大腿骨随より採取した骨髄細胞からM-CSFおよびRANKLを添加する際に、同時に脂肪酸の添加を行い、破骨細胞分化誘導時のタンパク質の発現変動を高分解能LC/MSを用いて網羅的に解析を行った。その結果、heptadecanoic acid (C17:0)を添加した群において多くのタンパク質発現変動が確認された。変動の見られたタンパク質群を詳細に解析した結果、オートファジーと関連のあるタンパク質群が多く確認できた。オートファージー関連タンパク質群の中にはR2年度に確認されたNrf2に関与するものも含まれていた。そこで次に変動のあったタンパク質群からいつくか候補を選定し、Crispr/Cas9によって欠損させたRAW264.7細胞を作製した。そのうち、3種類のタンパク質の欠損によってC17:0の機能性がキャンセルされることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度はR3年度に引き続き、ターゲット遺伝子をCrispr/Cas9によってノックアウトした細胞を用いて奇数鎖脂肪酸の破骨細胞分化誘導および起炎症作用の阻害作用機序を解明する。 さらにマウスを用いて骨粗鬆症に対する奇数鎖脂肪酸の予防効果についての評価を行う。通常のC57BL/6やBalb/cマウスに加えて、老化促進マウスであるSAMP6を用いて、食餌に奇数鎖脂肪酸を混餌した群、炎症性飽和脂肪酸混餌群などを一定期間摂取させる。飼育期間中、血糖値やトリアシルグリセロール値など血漿生化学検査、血中炎症性サイトカイン濃度の測定を行う。さらに老化に伴う種々の血中脂質の変化を、質量分析計を用いて網羅的に解析する。解剖後は、小動物用CTを用いた骨量の測定や臓器への免疫細胞の浸潤、各臓器におけるR3年度に見出したC17:0のターゲット遺伝子や炎症関連遺伝子発現をreal-time RT-qPCRやウエスタンブロット法などの手法を用いて測定し、奇数鎖脂肪酸の抗老化・骨代謝異常の改善作用について検討・評価する。
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