研究課題
本研究では、動物モデルと初代培養マウス心筋細胞を用いて、多価不飽和脂肪酸の心筋細胞に対する本質的な作用を検証することで、多価不飽和脂肪酸の摂取が心臓の電気活動を調節し、心房細動などの不整脈の発症予防に寄与するとの仮説を検証することを目的としている。今年度は、我々の実験モデルで確認されたエイコサペンタエン酸(EPA)の心筋保護作用や抗不整脈作用について、詳細な細胞内メカニズムを検証するため、EPAなどのオメガ3系多価不飽和脂肪酸の選択的受容体FFAR4に着目した。特に、EPAによる心筋L型カルシウム(Ca2+)チャネルの発現制御にFFAR4が関与するかについて検証した。初代培養マウス心筋細胞に高脂肪負荷、EPA、FFAR4受容体遮断薬(AH7614)、FFAR4受容体選択的アゴニスト(TUG-891)を併用投与し24時間培養後に遺伝子発現解析、電気生理学実験、細胞免疫染色を行った。その結果、高脂肪負荷により心筋L型Caチャネル(Cav1.2, Cav1.3)とその転写因子CREBのmRNA発現減少、タンパク発現の減少、及びL型Ca2+電流の抑制が認められたがEPA投与によりその作用は回復した。AH7614はEPAによるCav1.2の逆リモデリング作用を阻害し、FFAR4アゴニストであるTUG-891の投与ではEPAと同様の作用が確認された。一方、高脂肪負荷状態で心筋細胞内の脂肪滴蓄積は増加しROS産生を亢進したが、EPAの存在下で脂肪滴とROSの産生は抑制された。これらのことから、EPAによるL型Ca2+チャネル逆リモデリングはFFAR4を介する経路と、受容体非依存的経路によって発揮される可能性が示唆された。
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