研究課題/領域番号 |
20K11641
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
安達 泰弘 産業医科大学, 医学部, 講師 (10346546)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪酸結合タンパク質 / 胸腺上皮細胞 / ケラチン |
研究実績の概要 |
生体において、脂肪酸を含む脂質は重要なエネルギー源であると同時に皮脂やホルモン、細胞膜等といった生体成分の構成要素でもある。脂肪酸結合タンパク(FABP)は、細胞内脂肪酸局在を決定し得る脂肪酸のキャリア分子であり、また脂肪酸情報伝達系に関与し、標的遺伝子の転写を制御するする重要な分子でもある。一般的に、FABPが関与する脂肪酸情報伝達系の標的は脂質代謝関連遺伝子群であると考えられているが、その全貌は必ずしも明らかではない。 これまでに野生型とFABP5-KO胸腺の間でKrt42遺伝子発現レベルの差が判明したことから、予定していたISHにより胸腺組織内でのKrt42遺伝子発現部位を可視化したところ、陽性反応は主に胸腺皮質に散在していた。これらKrt42遺伝子発現陽性細胞の数はごく少数であり、細胞核の形態から胸腺皮質上皮細胞(の一群)であると考えられた。同時に、この計画独自の抗Krt42抗体を作製しコントロール組織であるマウス表皮を用いた組織染色を行った結果、文献(Tong X. et al., 2004) と同様の部位に陽性反応が見られた。この結果は、これまでに唯一入手出来ている市販の抗Krt42抗体を使用した場合でも同様であったことから、作製した抗体はKrt42に対する特異性を有すると考えられた。現在はwestern blot等で使用可能かどうかについても検定中である。 Krt42遺伝子の上流領域に、FABPから脂肪酸ligandを受け取る転写因子であるPPARの結合部位を3か所見出した。この配列はKrt42遺伝子の発現調節に関連すると考えられたため、現在これらを含む領域のクローニングとPPAR結合配列への変異導入を行っており、早期にLuciferase assayを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
外部企業にこの計画独自の抗Krt42抗体の作製を依頼したが、先の新型コロナウィルス感染症の拡大による配送遅延等により納品が大幅に遅れたため、抗体の特異性の確認が後にずれ込み、また多少の時間を要している。 同感染症の再拡大による講義・実習方式の変更とその対応に時間を要したため、令和3年中盤から実施していた遺伝子発現制御に関する実験も遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度も社会情勢に影響される可能性が大きいが、計画している「細胞株への遺伝子導入、及び遺伝子発現抑制実験」及び「組織幹細胞との関連性」については出来得る限り実施する。しかしながら、令和3年度実施予定であった「FABPによるKrt42遺伝子の発現調節」に関する実験は未完であることから、独自に作製した抗体の特異性確認も含めて令和4年度計画に先行する形で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う配送遅延等により、作製依頼していた抗体の納品が大幅に遅れたため、その後の特異性確認実験等の実施が後にずれ込んでしまった。これにより抗体を用いた実験の一部が未完となっている。また、実施予定であった遺伝子発現調節実験も未完であるため、これらの材料を購入する資金の一部が次年度繰り越し金となった。令和4年度は当初の計画内容に先行する形で上記実験を完了させる予定であるため、令和3年度計画に基づき、必要物品の購入に充てるものとする。
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