食用されるクルクミンは腫瘍の微小環境において、制御性T細胞(Treg)は腫瘍免疫を負に制御する。我々が合成したクルクミン誘導体GO-Y030はクルクミンの数倍から30倍の抗腫瘍活性が増強した。GO-Y030にもTreg抑制活性が期待される。また、クルクミンの誘導体であることから低毒性だと思われる。100 nMのGO-Y030はFoxp3陽性T細胞の誘導を有意に抑制した。その抑制活性はクルクミンの10倍であった。GO-Y022はクルクミンの熱変性によって生じ、食品に含有されている。250 nMの GO-Y022はFoxp3陽性T細胞の誘導は有意に抑制した。GanマウスはWntシグナル、COX2、及びProstaglandin E Synthaseを過剰発現させた胃癌のモデルマウスである。コントロール食のHigh Fat Dietで飼育すると20週令では92%に胃癌を発症する。このマウスモデルにGO-Y022を経口投与し、消化管を多数サンプリングした。GO-Y022をGanマウスに経口摂取させると有意に胃癌の発生を抑制した。これらの標本において免疫担当細胞の挙動を免疫組織化学的手法をもって解析した。しかし、GO-Y022はFoxp3陽性TregやCD8陽性細胞の比率を有意に低下させなかった。GO-Y022によるTreg抑制が起こらない原因は胃癌細胞が産生する乳酸の存在と思われた。そこで、胃癌細胞の乳酸の産生を抑制する目的で、2-deoxy-d-glucose(2DG)を併用するとTreg抑制が誘導された。このようにGO-Y022と2DGを併用することでTreg抑制が誘導できる可能性が示された。グルコースの誘導体である2DGも安全性が高く、機能性食品としてTreg抑制に貢献する可能性が示唆された。
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