最終年度は、小腸特異的ChREBPノックアウトマウスを用いて、小腸ChREBPによるフルクトース代謝への影響を検討した。 ChREBP flox/floxマウスとvilli Cre トランスジェニックマウスとの交配により、小腸特異的ChREBPノックアウトマウスを作出した。小腸特異的ChREBPノックアウトマウスでは、既報と同様に、対照群であるChREBPflox/floxマウスと比べて、ChREBPの標的遺伝子(GLut5、Khk、Aldob)の発現が低下し、他方、肝ChREBP発現やChREBP標的遺伝子発現量はChREBPflox/floxマウスと比べて変わらなかったため、臓器特異的なマウスが作成できたと考えた。さらに高フルクトース食負荷により、全身型ChREBPノックアウトマウスと同様に虫垂内糞便重量の増加が見られ、糞便内の酢酸含量も増加した。しかし、血中酢酸濃度や肝内酢酸含量は増加しなかった。肝トリグリセリド含量やコレステロール含量についても同様に小腸特異的ChREBPノックアウトマウスとChREBPflox/floxマウスでは変わらなかった。上記は全身型ChREBPノックアウトマウスでは見られない変化であった。その理由として、全身型ChREBPノックアウトマウスでは肝臓において酢酸を利用して脂肪酸合成やコレステロール合成ができないのに対して、小腸特異的ChREBPノックアウトマウスでは、肝臓におけるChREBP活性は保たれているので、肝臓において酢酸を利用して脂肪酸合成やコレステロール合成ができるためと考えられた。上記の結果からは、腸内細菌により産生された酢酸は肝臓でも利用され、脂肪酸合成やコレステロール合成に利用されると考えられた。
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